登山家の野口健が空気銃で子猫の頭を撃ち飛ばし、それを咎めた友人の足も撃ったという内容の書き込みがネット上にあり、よくあるデマだろうと思いつつ調べてみたところ、本当の事だったのでビックリした。本人が自伝で語っているので間違いない。野口は子供の頃かなりの不良で、その頃のエピソードの一つとして出てくる。

野口著『100万回のコンチクショー』にその記述があるが、より詳しく書かれている、一志治夫『僕の名前は。アルピニスト野口健の青春』から引用すると*1
(野口健がエジプトに住んでいた子供時代のこと)
エジプト製の空気銃を手に入れたのもちょうどそんなときだった。(中略)ついには鉛の弾を込めて撃つライフル型の空気銃「ラムセス」を手に入れる。価格は38ポンド。エジプト人が食用に雀や鳩を撃ったりするための空気銃で、それなりに殺傷能力があるのだが、健や(友人の)岡本のような小学生でも買えた。
↓ エジプト製の空気銃「ラムセス」
空気銃ラムセス
健は最初、身の周りの物を撃っていた。たとえば、内装工事をしている家が向かいにあれば、その部屋にぶらさがっている電球を撃った。走行中のクルマの窓を撃った。電球は割れたが、クルマの窓にはうっすらと傷がつくかひびが入る程度の能力の空気銃だった。
銃に慣れるにつれ、健の狙いは、物から次第に生き物へと移っていく。
(中略)
最初に狙った生き物は、鳩だった。撃ち落とした鳩は、肉屋に売りさばいた。その金で鉛の弾をまた買うのだ。
勝手に動物を殺しだすというエピソードは、どうしても「少年A」を連想してしまう。エジプトでは鳩を食べるというのは事実のようだ。

野口と、日本人学校の友人の板垣、田中の3人は、カイロの中州の街に繰り出す。(友人の名前は仮名だと思うが、特に説明はない)
丁字路の道には大きな車輪付きのゴミ箱が置かれていて、それに向かって銃を発射する。鉛の弾が鉄のゴミ箱に当たると、カーンという音が響き渡る。近くにいる数匹の猫を音で脅かしているのだ。そのたびに猫たちは驚き、騒ぐ。
次に、健はゴミ箱ではなく、猫に標準を合わせる。それはちょっとした遊びのつもりだった。(中略)
次の瞬間気が付くと人差し指が動いていた。鉛の弾は、親子でいた子猫の方の頭に当たり、骨を砕く。子猫はその場に倒れ、痙攣し、頭からは脳漿が飛び散った。健は、親猫がミャーミャーとなきながら子猫の頭をながめているのを呆然とただ見ている。
板垣は、その猫がのたうち回る姿を正視できない。断末魔の泣き声が耳にこびりつく。一方、一年上の田中は、「なんで撃ったんだ、なんで殺したんだよう」と、健のことを責め始める。動揺し、混乱している健は、田中に、「うるせー、お前、撃つからな」と言い返す。板垣は二人のやりとりがだんだん険悪になっていくのを聞いている。「撃つぞ」「撃ってみろよ」といったやりとりが繰り返される。
そして再び鉛の弾は発射される。(中略)銃声のあと、一瞬の間があってから田中の叫ぶ声が丁字路に響き渡る。田中は、「熱い、熱い」と訴える。
その後、3人でタクシーに乗る。
タクシーの中では、わめく田中に健が「うるせー、うるせー」と怒鳴り続けている。
田中の母と合流し、病院で手術が行われた。弾は足の骨で止まっていた。
野口と板垣は、2人で歩き出す。
家に帰るのがいやで途中公園に寄ったりもした。けれども、板垣が驚いたのは、そんなしょげている健が、その失意の道すがら、また鳩に向かって空気銃を発射したことだった。なんでまた撃つんだ、と思ったが、それは言葉にはしなかった。
もともと野口健には不良の評判が立っていたが、その後、触れてはいけない人扱いとなり、ほとんどのクラスメートが相手をしてくれなくなった。

外交官である父親もおかしな人で、これだけの事件を起こした息子を叱らず、銃を没収すらしない。後に大学教授となっているが、大丈夫なんだろうか。

野口健は今では更生したようで、タレントとしてバラエティ番組にも出ている。

しかし、こんなことをしでかしたうえ、子供時代の武勇伝の一つとしてこのエピソードを自伝に大っぴらに載せている人物を、テレビに映すのは問題だろう…特にバラエティ番組では。野口健の顔を見ても子猫殺しが浮かんできて笑えないよ。

当時、母親が家を出ており、家庭が崩壊しかけていたという同情できる要素もあるけど、さすがにこれはない。

その他の犯罪告白

野口はこれ以外にも著書で未成年時の犯罪をたくさん告白している。

小学校低学年(日本)
・ハーフのため虐められていたが、カッとなり植木鉢のかけらで相手を殴打し、頭を割った
・その後も複数人に対して暴力をふるう
・女児のパンツの中に手をいれてまさぐった

小学校5~6年頃(エジプト)
・かんしゃく玉を多数使った手製爆弾を使い、通行人にやけどを負わせた
・ホテルに停めてあった各国大使館の車を注射針を使って何台もパンクさせた
・家の近くの駐車場に停めてあった車のガソリンタンクに砂糖を入れ、エンジンを破壊した
・ティッシュに火をつけて風に飛ばすという遊びをして火事を起こした
・自動車のライトを割って中の電球を集めた
・ベンツのエンブレムを引き抜いて盗んだ
・子猫射殺

ベンツのエンブレム窃盗とか、まるで漫画「カイジ」のようだ…

高校(イギリスの全寮制日本人学校)
・寮で女子同級生の洗濯前の下着を見つけ、しめた!とばかりに盗む。のちに焼却炉で燃やして証拠隠滅。
・友人3人で先輩1人に暴行を働き、停学処分
・学校の近くの森で勝手にキジ狩りを繰り返す。キジに石を投げて飛び掛かり、首を切って絞めた。

(高校では、春休みに帰国したときに右翼の街宣車に乗ってスピーチしたというエピソードもある)

成人後
・ネパールで貧困層の少女に対し、経済力を背景にして、人身売買まがいの行為を行う → 詳細はこちら

参考文献、動画

野口健はたくさんの著書を出しているが、過去の犯罪行為についての記述は、初期の本に集中している。犯罪告白の三部作とも言える作品は、

・ 『落ちこぼれてエベレスト』(1999)
作家としてのデビュー作。鳩を殺したことは書いているが、猫を殺したことは隠しているなど、下2冊に比べるとマイルド。ただしネパールでの人身売買まがいの「結婚」を扱っているのはこの本のみ。

・ 『僕の名前は。アルピニスト野口健の青春』(2001)
登山以外の生い立ちについて最も詳しい。よって犯罪行為についても最も詳しい内容になっている*2

・ 『100万回のコンチクショー』(2002)
『僕の名前は』と同じような内容だが野口自身が著者になっている。下着泥棒についても書いてある。


そのほか、『確かに生きる―10代へのメッセージ』(2007)でも過去の犯罪行為に軽く触れている。

動画
吉田豪が野口健の黒い過去について語っている動画があり、簡潔にまとまっていて面白い。

この動画によると、野口健は小中学校の講演会でも様々な犯罪エピソードを披露しているらしい。
テレビだけでなく学校からも排除しないとマズイと思う…
環境保護活動を続けるのは良いことだけどさ…


*1:2001年発行の初版より

*2:「その他の犯罪告白」節にある行為は、ほとんどこの本に載っている(下着ドロ、成人後の「結婚」 のエピソードは無い)。