「もうおねがいゆるして おねがいします」。
東京都目黒区の女児虐待死事件で、亡くなった船戸結愛ちゃん=当時(5)=が両親に許しを乞うた「最期の叫び」は世論を突き動かし、児童相談所の体制を拡充する法改正へとつながった。
捜査関係者によると、結愛ちゃんは父親の雄大被告(34)=保護責任者遺棄致死罪などで起訴=に連日、午前4時ごろに起こされ、ひらがなの練習をさせられていた。鉛筆書きの丁寧な文字が並ぶ大学ノート。描かれた寂しげな自画像のような絵が捜査員の目に留まり、問題の文章は、めくり進めたページの隅に見つかった。
「もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんからきょうよりかもっともっとあしたはできるようにするから ほんとうにもうおなじことはしません ぜったいやくそくします」。
胸をえぐるような言葉に、警視庁は異例の全文公表に踏み切り、政府は関係閣僚会議を開催。その後の検証で、一家が事件前に住んでいた香川県の児相が結愛ちゃんを2度、一時保護していたことや、医療機関に施設入所の必要性を指摘されていたのに、転居時に児童福祉司の指導措置を解除していたことが判明した。
2019年1月には、千葉県野田市で虐待された小学4年の女児が死亡する事件が発生。児相の危機意識の欠如や関係機関との連携不足が再び指摘され、同6月、児童への体罰禁止や児相の介入機能強化を盛り込んだ改正児童福祉法と児童虐待防止法が成立した。
法改正の中心となった厚生労働省の幹部は「これまで、虐待死事案の当事者の声が表に出ることはなかった。女児の声が世論を動かした」と話す。
それでも虐待事件は後を絶たない。8月には鹿児島県出水市で、大塚璃愛来ちゃん(4)が母親の交際相手の男に殴られ、その後死亡。自治体などと児相との連携不足が表面化している。