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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

ヘルタースケルターで周章狼狽

「ステップファーザー・ステップ」について書くのは三回目だが、この短編集は、対象年齢がよく分からない。一見ジュブナイルだが、内容には不倫・強姦・殺人など、殺伐とした話がけっこうある。まあ、今どきの子供にこういうのは特に問題にはならないのだろうか。それとも、対象は大人読者なのか。それにしては、作中の謎やトリックはかなり雑である。それを話術でカバーしているわけだ。
で、作中の粗を見つけて、その考察をするのも、読書の楽しみ方のひとつだ、というのが私が毎度書いていることだ。
ここでは、作品の粗ではなく、言葉についての考察も、同様の娯楽だ、という話である。

たとえば、私は「ヘルタースケルター」という言葉の意味を長い間知らなくて気になっていたのだが、この短編集の作品のひとつの題名が「ヘルタースケルター」で、作中にその訳語が「周章狼狽」とあって、積年の疑問が解消した。しかし、それと同時にこの「周章狼狽」の「周章」とは何だ、という疑問が生じたのである。私がこの単語を見たのは生涯で10ぺんもあるかどうかだが、その「周章」に疑問を持ったのは初めてである。
「狼狽」は誰でも分かるし、それが「狼の寝床」(狼が這いまわった様か?)みたいなのと関係がある、と何かで読んだことがある人もいるだろう。しかし、「周章」は、まったく推理ができない。「周」も「章」もうろたえることと関係があるようには見えない感じである。いや、「漢字」である。まあ、「周」だけなら、問題の周辺を意味すると推定できないこともないが、「章」が問題だ。
あきらめて、漢和辞典で「章」を調べてみる。

ふみ(文書)、のり・手本、あきらか(にする)、あらわれる、しるし、はん(印)、あや(美しいもよう)、いろどり

どうも、どれもピンと来ない。そこで「周章」を調べてみる。だが、「周章」は載っていない。しかし、「周」には回る意味があるから、うろたえて歩き回る様、と言えないこともない。「章」に関してはお手上げだ。まあ、「しるし」、つまり「周章」で「うろたえる様」としておこう。

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