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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

「頭蓋骨」の読み方

私は、「頭蓋骨」を「とうがいこつ」と呼ぶという、この種の「専門家独特の用語(ジャーゴン:隠語)」が嫌いで、「俺たちは庶民とは違うんだ」とお高くとまっている印象を受ける。なぜ、一般には知られていない読み方をするのか。発音が他の言葉と間違えるというのなら分かるが、「ずがいこつ」には、そういう虞(おそれ)も無いはずだ。
まあ、「頭部」という言葉が先にあって、それを蓋うから「とうがい(頭蓋)する骨」だ、という理屈だろうか。

(以下引用)


「頭蓋骨」を何と読むか?

 皆さんは「頭蓋骨」を何て読んでいるだろうか。大方は、何を言っているんだ、「ズガイコツ」に決まっているではないか、とおっしゃるに違いない。
 だが、お近くに国語辞典があったらぜひ引いてみていただきたい。実は、すべての国語辞典が「ズガイコツ」を本項目にしているわけではないのである。「頭」を「トウ」と読んで、「トウガイコツ」を本項目として解説しているものも少なくないのである。
 おもな辞典をズガイコツ派、トウガイコツ派で分けると以下のようになる。
ズガイコツ派:『日本国語大辞典』『岩波国語辞典』『新選国語辞典』『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』
トウガイコツ派:『大辞泉』『大辞林』『広辞苑』『明鏡国語辞典』  
 『明鏡国語辞典』は別にして、国語辞典といいながら百科事典色の濃い中型辞典3冊がすべてトウガイコツ派なのは面白い。ズガイコツ派は辞典の規模は違っても、純粋な国語辞典と言えるものに多いのである。
 「頭」は「ズ」とも「トウ」とも読むので、「トウガイ」も「ズガイ」もどちらも正しいのだが、一般には「ズガイコツ」ということの方が多いであろうから、各辞典の扱いは気になるところである。
 NHKも、「頭」の読みは、〔トー〕頭髪 頭部外傷、〔ズ〕頭がい骨 頭寒足熱 頭痛 と使い分けている(『ことばのハンドブック2』)。
 新聞はどうかというと、たとえば共同通信の『記者ハンドブック』では「ズガイコツ」としながらも、「トウガイコツ」も認めている。
 知人の医師の話では、解剖用語としては「トウガイコツ」であるらしい。以前、ある医学ライターから、医学系の大学は系統によって、トウガイコツ派とズガイコツ派があり、さらにはトウガイコツ派は「頭痛」を「トウツウ」と言っているという話を聞いたことがあるが、確実な話かどうかはわからない。
 トウガイコツ派の各辞典も「ずがいこつ」を空見出しとして設けているので、引くことに関して問題はないのだが、一般的な感覚としてはズガイコツの方が優勢な気もしないではない。
 トウガイコツとズガイコツ、どちらが先に生まれたのかは全くわからないのだが、ズガイコツが一般的になったのは、『日本国語大辞典 第2版』にも引用されている「尋常小学読本(明治三六年)」の、「頭蓋骨(ズガイコツ)といふ骨が、へやのかべになってゐて」などのような読み仮名が影響しているのかもしれない。
 それにしても学術的な読みと国語的な読みが異なり、それが辞典にも影響しているという、面白いことばではある。
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