dear →ears→ whiskers
あまりに暑いので、頭がぼうっとしており、まともな読書ができないので、「不思議の国のアリス」の英語原書と、その翻訳数書を、半分寝ぼけながらちらちらと眺めていると、興味深い箇所に出遇った。
話の冒頭でアリスが追っかけていた白兎が、アリスが穴に落ちた後、再度前方を駆けていくのをアリスが目撃する場面で、その時、兎は
"Oh my ears and whiskers,how late it's getting !"
と言うのだが、手持ちの翻訳はこの部分をそれぞれこう訳している。
「ああ、なんてこったい、すごく遅れちまった!」(河合祥一郎訳)
「やれやれ、どうすんだい、たいした遅刻だよなあ!」(矢川澄子訳)
「なんてことだ、よわったな!どんどん遅くなっちまう!」(福島正実訳)
ごらんのとおり、どの訳者も「my ears and whiskers」の訳から「逃げている」。
それも当然と言えば当然で、これは翻訳不可能だからだ。
勘のいい人は、白兎が最初に登場する場面で、
”Oh dear! Oh dear! I shall be too late!"
と言ったのと、この「my ears and whiskers」がつながっていることに気づくだろう。で、どの翻訳者も、それは分かっていたと思うが、ここはほとんど翻訳不可能なのである。つまり、英語の洒落なのである。
dearに感嘆詞としての用法があり、「おや、まあ」などと訳せることは、中学生でも知っている人もいるかもしれない。そして、帰国子女などは、その変化形で「dear me!」という表現があることも知っているかもしれない。これも「おや、まあ」なのだが、my dearとなると、「私の愛しい~」となるのは、それこそ中学生でも知っていることだ。そこで、「my dear」が、兎が話し手なので「my ear」となり、兎には頬髯があるので「my whiskers」と続くわけである。
つまり、英語の二重三重の連想が、洒落となっているわけで、これは翻訳不可能ということになる。
話の冒頭でアリスが追っかけていた白兎が、アリスが穴に落ちた後、再度前方を駆けていくのをアリスが目撃する場面で、その時、兎は
"Oh my ears and whiskers,how late it's getting !"
と言うのだが、手持ちの翻訳はこの部分をそれぞれこう訳している。
「ああ、なんてこったい、すごく遅れちまった!」(河合祥一郎訳)
「やれやれ、どうすんだい、たいした遅刻だよなあ!」(矢川澄子訳)
「なんてことだ、よわったな!どんどん遅くなっちまう!」(福島正実訳)
ごらんのとおり、どの訳者も「my ears and whiskers」の訳から「逃げている」。
それも当然と言えば当然で、これは翻訳不可能だからだ。
勘のいい人は、白兎が最初に登場する場面で、
”Oh dear! Oh dear! I shall be too late!"
と言ったのと、この「my ears and whiskers」がつながっていることに気づくだろう。で、どの翻訳者も、それは分かっていたと思うが、ここはほとんど翻訳不可能なのである。つまり、英語の洒落なのである。
dearに感嘆詞としての用法があり、「おや、まあ」などと訳せることは、中学生でも知っている人もいるかもしれない。そして、帰国子女などは、その変化形で「dear me!」という表現があることも知っているかもしれない。これも「おや、まあ」なのだが、my dearとなると、「私の愛しい~」となるのは、それこそ中学生でも知っていることだ。そこで、「my dear」が、兎が話し手なので「my ear」となり、兎には頬髯があるので「my whiskers」と続くわけである。
つまり、英語の二重三重の連想が、洒落となっているわけで、これは翻訳不可能ということになる。
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