忍者ブログ

独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

恋愛することと「恋愛の表現」

小谷野敦が「日本文化論のインチキ」の中で、「恋愛は12世紀西洋の発明だ」という説に関して、「それは、12世紀に西洋の『男が』恋愛を詩や歌の中で表現するようになったということではないか」という趣旨のことを書いているが、これは卓説だと思う。つまり、男が「女を得るために詩や歌を使い、その詩や歌の中で恋に苦しむ自分を描く」と、その詩や歌が吟遊詩人によって広まるわけだ。もちろん、これ(詩歌の中に恋情を描くこと)は日本では古今集の時代には当たり前の現象だったわけで、明治の青年が「近代的自我」の現れとして西洋の文芸の中の恋愛を参考にして、盛んに「西洋的恋愛」を試みたのは、当時の青年が自国の文化にうとかったためで、明治以降の文化が明治維新によってそれ以前の文化から断絶した結果だろう。
PR