「短い」「高い」「20」とは何でしょうか
(以下引用)
ちなみに「トール」「ベンティ」などのカップサイズ名は、スタバ前CEOのハワード・シュルツが、イタリアのバール(コーヒーショップ)をイメージして導入したとされている。
ベンティはイタリア語で数字の「20」を意味し、注文すると「20オンス=約590ml」のドリンクが出てくる。
トールに関しては、もともとは小さいサイズからのサイズアップを意味していたと思われる。
シュルツは1982年、役員としてスタバに入社する。1985年には一度スタバを離れ、「イル・ジョルナーレ社」を設立。1987年にスタバを買収している。
そのイル・ジョルナーレ社のメニューに「Tall drinks available for an additonal charge of 25¢」(トールサイズのドリンクが追加料金25セントで利用可能です)と書かれているのだ。
ややこしいことに、米国では日本での最小サイズにあたる「ショート」がメニューに載っていない店舗もあるようだ。この場合、一番小さいサイズがトールということになってしまう(「裏メニュー」扱いでショートを注文できるという情報もあるが)。
スタバの特別な感じを演出するには良いのかもしれないが、初めての利用者は混乱するだろう。
スタバが直面する米国・中国での危機
ともあれ、こうしてシュルツは、現在のスタバの原型をつくった。
《1987年、スターバックスは座席を増やし、エスプレッソ飲料を提供するヨーロッパのカフェモデルに拡大した。顧客は、たとえ会う人がいなくても、フレンドリーな顔で出迎えてもらい、一日の中でちょっと一息つくというシンプルな体験のために、店に長居するようになった。数年後の1989年、社会学者のレイ・オルデンバーグが「サード・プレイス」という言葉を生み出し、人々が集い、くつろぎ、語らうことのできる家庭や職場を超えた場所を表現した》
(スターバックスストーリーズ&ニュース、2022年9月13日)
スタバの店舗があまりに増えすぎた今では「サード・プレイス」とは、スタバよりも高級感のある豆を使った店舗のことを指すようになっているが、そもそものサード・プレイスはスタバだったわけだ。
そんなスタバだが、成長の立役者であるシュルツが去った後、米国における売り上げが落ち込みを続けている。
「露骨なお得感」がもたらす負のメッセージ
《スターバックスが再び窮地に陥っている。前回の四半期決算報告で、既存店売上高が4%減少(第2の市場である中国では11%減少)するなど、期待はずれの結果を発表した。この発表後、株価は急落した》(ハーバードビジネスレビュー、6月26日)
同記事は、スタバが売り上げを上げるための割安のクーポン(ロイヤルティ・プログラム)を出していることを次のように批判している
《全体的な売上は増加しているにもかかわらず、購入履歴の追跡によって、顧客は飲んだり食べたり体験したりすることの価値よりも、買ったものの値段に注目するようになる。もっと買ってくれたら、何かタダであげるよ」という露骨なお得感には、「あなたは一杯一杯を買いすぎているから、たまにはタダであげる余裕があるんだよ」という暗黙のメッセージが含まれている》
たしかに、スタバがハイソなブランドイメージを自ら潰してしまうようなことになれば、既存のお客はまったく見向きもしなくなってしまうだろう。
日本のスタバの混雑を見る限り、すぐさまアメリカのように落ち込むことはないかもしれないが、スタバが厳しい局面を迎えつつあるのは少し気になるところだ。