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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

無知の効用

手塚治虫のような創造的天才でも、その晩年には創作能力が低下した理由を考えてみる。

それはおそらく「知識が増えすぎた」ことと「過去の達成(創作)が多すぎた」ことが原因ではないか。知識が増えることによって「知らないことを想像する」能力が低下する、あるいは想像に足止めが生じてくるわけだ。さらに、過去の達成によって、自分がこれから作ろうとするものが、その二番煎じ三番煎じでしかない、という「予測」や不安が生じ、想像にブレーキがかかるだろう。

漫画家の多くが10代後半から20代の「無知な時代」にその傑作の多くを創造しているところに、創造の不思議さがある。無知だから、自分の読んだ漫画の素晴らしいところは見えるが、そこに「描かれていないこと」が、そのお手本の漫画家が「切り捨てたところ」であるとは知らず、その部分に新しい可能性を感じて突き進み、その結果、新しい創造をするわけだ。

これを「無知の効用」と言っておく。古い言葉で言えば「盲人(メクラ)、蛇に怖じず」である。
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