パナソニック製の床材が剥がれる不具合が多発している。ユーザーからのクレームへのパナソニックの対応は一貫しておらず、責任回避ともとれる同社の姿勢にユーザーは不信感を募らせている。クレームは、顧客との信頼関係構築の機会にすべしという創業者、松下幸之助氏の教えをパナソニックは忘れてしまったのか。特集『続・パナソニックの呪縛』の#2では、床材の「剥がれ問題」から同社の病巣に迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
床材の保証期間はたったの2年
張り替えに数十万円かかる不条理
パナソニック製床材が施工後8~10年程度で剥がれるケースが相次いでいる。不具合は、確認できただけで全国27件以上(このうちの1件は千葉県松戸市の一戸建て住宅団地で起きた約30戸の不具合)に上る。
クレームを受けたパナソニックは、床材の剥がれは経年変化であって製品の不良ではないと主張。「当該床材の保証期間は施工後2年」であることを口実に、有償での修理を基本とする姿勢を崩さない。
しかし、内装工事に詳しい建築士は「経年変化とは、窓際の床が乾燥したり小さな傷が付いたりといった現象であり、床の表面がめくれるという類いのものではない。他メーカーの床材が剥がれたとは聞いたことがない」と話す。
確かに、保証期間が2年しかないことを知った上で、数年ごとに十数万円超の修理費(パナソニックグループがユーザーに提示している見積額は十数万円から50万円程度)をかけて床を張り直すことを覚悟して家を建てる人は少ないだろう。
当該床材のユーザーにパナソニックの説明や対応について聞くと、パナソニックには大手メーカーとしてのおごりがあるのではないかと疑わざるを得ない例が少なくなかった。
パナソニックの建材事業は、低収益にあえいでおり、10月に発足するグループ再編では非コア事業への格下げが決まったばかり。事業会社「パナソニック ハウジングソリューションズ」として再スタートを切るが、将来の身売り候補である(特集『パナソニックの呪縛』の『パナソニック新社長が描く「組織解体」最終形、主要4社の社長人事と“身売り”事業を大予想』参照)。
貧すれば鈍するというが、パナソニックは構造改革費用の捻出のために、顧客視点に立った事業運営を忘れてしまったのではないだろうか。
以下では、そのあきれた実態について見ていこう。