アダム・スミスの功罪
アダム・スミスは、重商主義を批判しました。これは16世紀末から18世紀にかけてヨーロッパの国々を支配した経済思想です。
重商主義では、富を代表するものは金銀または「財宝」でした。これは金銀貨幣を最大に重視し、これらの増大を重視する経済政策です。「利潤を獲得すること=貨幣を増やすこと」なので、商品を安く仕入れて高く売ることで、売買の差額から貨幣が生じます。よって、利殖という点からすると、農業や工業よりも商業のほうが優位に立つと唱えられていました。
これを獲得する唯一の手段は海外貿易しかありません。よって、富の獲得される場所は海外市場ということになります。国家は自国の生産物を海外に輸出し、海外からの輸入をできるだけ抑制し、その貿易差額を金・銀で受け取って貯め込みます。
それには低コスト・低価格で商品を輸出しなければいけないので、労働者の賃金は低く抑えられ、長時間労働になります。
これについて、アダム・スミスは異をとなえます。富は特権階級(金銀を重視する階級)ではなく、諸階層の人々にとっての「生活の必需品と便益品」を増すことであるというのです。つまり、自国の労働により、生産力が高くなればそれだけ富の量は増大することになります。さらに、スミスの『国富論』では、重商主義の批判から、自由放任の思想が展開されます。
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