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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

宇宙物理学という山師の巣窟

私は「ビッグバン説」や「膨張宇宙論」は妄想だという考えだが、それは単に「無から有が生まれることはありえない」という根本から見ての判断である。
以下の記事は、その妄想の概説をメモするだけで、それらの説に意味がある(正しいと思っている)ということではない。

「宇宙の膨張」に見えるのは、単に遠くにある星を地球という一点から観測した時に、「離れていくように見える」という錯覚にすぎないだろう。地球(太陽系)外に天文観測所は存在しないのだから、未来に地球外天文観測所ができたら、上記の妄想説はすべて捨てられるのではないか。

(以下引用)


138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか?

本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。

*本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

ビッグバンの火の玉の膨張

われわれが住んでいる場所は特別であるとする、古代ギリシャ、プトレマイオスの「天動説」。それが、1543年に発表されたコペルニクスの「地動説」により否定され、われわれの地球は、太陽の周りを回る、ごくありふれた惑星であることが指摘されました。地動説がキリスト教会から警戒され、イタリアのガリレオ・ガリレイ博士が裁判にかけられながら「それでも地球は回っている」と言ったというエピソードは、あまりにも有名です。

ニュートン博士が万有引力の法則を発表するずっと前、1609年から1619年にかけて発表された「ケプラーの三大法則」でも、地球の軌道は円ではなく楕円であることが、詳細な観測により、すでにわかっていたというのですから驚きです。

 

ハッブル博士が1929年に、またベルギーのジョルジュ・ルメートル博士が1927年にそれぞれ提唱した「ハッブル=ルメートルの法則」とは、銀河が遠ざかる速度がその距離に比例する、というものでした。もちろん、事前に別の方法を用いてその銀河までの距離を正確に測っておく必要があります。この、「どの方向の銀河でも遠ざかっている」という証拠から、宇宙が膨張していることが明らかになったのです。

理論的には1922年にロシアのアレキサンドル・フリードマン博士が報告したように、アインシュタイン方程式の解として、宇宙定数があろうがなかろうが、宇宙が膨張することを導出しています。アインシュタイン方程式はテンソルと呼ばれる4行4列の特殊な性質をもつ行列に関する方程式です。

この宇宙を一様等方と仮定したときに、複雑なアインシュタイン方程式を簡単な形にした式は「フリードマン方程式」と呼ばれ、その宇宙膨張の解は「フリードマン解」と呼ばれます。フリードマン解では、宇宙の大きさは、火の玉の放射のエネルギーが大きな割合を占める宇宙では宇宙年齢の1/2乗、物質のエネルギーが大きな割合を占める宇宙では宇宙年齢の2/3乗に比例して大きくなります。

宇宙を「風船」にたとえて考えてみる

宇宙が時間とともに膨張するなら、時間を逆にたどれば、宇宙は小さかったことになります。そのような宇宙の様子を、一定の速度で膨張する風船に例えてみましょう。

photo by iStock© 現代ビジネス

私たちは、風船の中心にいると仮定します。風船の表面に銀河が張り付いているイメージです。私たちから見て、風船の膨張とともに、それぞれの銀河への距離は離れていきます。同時に、銀河同士の距離も遠ざかっていきます。膨らめば膨らむほど、移動距離も長くなり、離れるスピードも増していきます。このことは、ものすごく大きくなったら、もしかしたら、その速度は光の速度に迫り得るかもしれないとも想像させます。実際、遠方銀河の後退速度は、本当に光の速度に迫っているのです。

その一方、十分に膨らんだ後に、時間を逆回しにしてみましょう。風船の半径を半分にしたならば、中に入っている物質の個数密度は8倍になります。加えて、物質は質量をもっているので質量密度も8倍になることを意味します。有名なアインシュタイン博士の関係式、E=mc²では、Eはエネルギーで、mは質量ですね。cは光の速度ですが、定数です。この式の教えるところは、質量はエネルギーであるということです。つまり、風船の半径を半分にしたならば、中に入っている物質のエネルギー密度は8倍になると理解されるのです。

今度は、風船の中に光が閉じ込められていた場合も考えてみましょう。波長の短い青い光は、波長の長い赤い光より高いエネルギーをもちます。それをご存じであれば、風船の大きさが半分になると、光の波長が半分になり、光のエネルギーは2倍になることを想像していただけると思います。光の個数密度は、物質の個数密度と同じく、8倍になるのですが、この波長が変わることも加味すると、光のエネルギー密度は16倍になるのです。この事実から、宇宙の大きさをもっと小さくしていけば、いつかは光のエネルギーが物質のエネルギーを上回る、火の玉の宇宙になることが容易に推測されます。

ロシア出身のアメリカで活躍したジョージ・ガモフ博士が提唱した「火の玉宇宙のモデル」は、まさにこの考え方に基づくものです。宇宙は、少なくとも温度約100億度以上の火の玉から始まった。そして、宇宙誕生の3分後には宇宙全体で重水素とヘリウムなどの軽い元素が誕生するという、元素合成のシナリオを予言しました。実際、重水素とヘリウムの観測値から、ガモフ博士の元素合成の理論が正しいことが証明されています。ハッブル=ルメートルの法則の発見以降も、宇宙膨張を疑う研究者はたくさんいました。ガモフ博士が火の玉宇宙モデルを提唱した後も、フレッド・ホイル博士は、「まるで大きな爆発(ビッグバン)みたいに宇宙は始まったというのかね?」と批判したそうです。このことから、皮肉にも「ビッグバン宇宙モデル」という名称で呼ばれるようになりました。

「宇宙マイクロ波背景放射」の発見

その論争に終止符を打ったのが、1964年のアメリカのアーノ・ペンジアス博士とロバート・ウィルソン博士による、火の玉のなごりである絶対温度3度(マイナス270℃)の電波の発見です。この電波は「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」と呼ばれます。その後、ビッグバン宇宙モデルは、宇宙膨張、軽い元素の元素合成、宇宙マイクロ波背景放射の3つの観測事実により、宇宙の標準的なモデルとしての確固たる地位を固めていくことになります。

宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙のどの方向からもやって来ています。現在では、その絶対温度3度からのゆらぎの空間的な分布まで測定されています。そのゆらぎは、約10万分の1という小さいものでした。プランク衛星による温度ゆらぎの詳細な観測から、現在の宇宙のエネルギーの中身は、放射(光子とニュートリノ)が約0.01%、見える物質が約5%、ダークマターが約25%、ダークエネルギーが約70%だとわかってきました。

異なるとはいえ、0.01%から70%と、約4桁の範囲ですべての成分がだいたい同じ程度のエネルギー密度なのです。これも実は大変不思議なことです。そして、2018年のプランク衛星チームによる精度のよい観測データが発表され、宇宙年齢は137.97億±0.23億年と報告されました。

それでは宇宙の大きさがゼロであった時点より過去の宇宙の歴史は、どうなっているのでしょうか。そこは、実は現代の物理学でもわかっていないところなのです。大きさがゼロでは、エネルギー密度が無限大になってしまいます。そうすると既存の物理学の式では計算できないことを示していて、理論が間違っていることになってしまいます。その間違っている理論に基づいて推定しても説得力はありません。つまり、そうした高密度では、現在知られている理論が、いまだ知られていない新理論に取って代わられると予想されています。

例えば、量子重力理論の候補である「超弦理論」などが候補となります。そうした新理論では無限大は回避されて、宇宙は有限の大きさの泡のように誕生したのではないかと、アメリカのジェームズ・ハートル博士とイギリスのスティーヴン・ホーキング博士は提唱しました。これは「ハートル=ホーキングの無境界仮説」と呼ばれます。泡の誕生の最中には、実数の時間ではなく、虚数の時間が流れていたとも考えられています。虚数とは、高校の数学で習う、実数の軸に垂直に交わる、違う軸に乗っている数のことです。

 

実際、宇宙初期でなくても、泡の生成を伴う真空の相転移を記述する方程式には、虚時間が流れることが知られています。そうなると、実数の時間で測るべき宇宙誕生の前か後かなんて、考える理由もわからなくなります。その泡が急激に膨張することにより、つまりこれは宇宙創成のインフレーションなのですが、ビッグバン宇宙につながると期待されています。偶然、条件の合う領域がインフレーションして大きな宇宙をつくったと思うと、唯一の宇宙(ユニバース)ではなく、たくさんの宇宙(マルチバース)が生まれた可能性すら示唆します。つまり、他にもインフレーションする条件がそろえば、別の宇宙は誕生し得て、そちらの方がずっと数が多いだろうことが推測されます。

 
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