コバエとは? いつ、どこから湧く?

キレイに掃除をしているつもりでも湧いてしまうコバエはキッチンの天敵キレイに掃除をしているつもりでも湧いてしまうコバエはキッチンの天敵

毎年、気温が上がり始めると、どこからともなく現れるコバエ。その小さな姿とはうらはらに、存在感は絶大で、台所にたったの1匹飛んでいるだけでも、「生ゴミでも腐らせたかしら」「どこかに不衛生な場所があるの?」と、非常に気になるものだ。

最初の1匹は一体いつ、どこからやって来るのだろうか。今回は、コバエの種類や特性といった意外と知られていないコバエの知識に加え、発生する原因や時期、対策について紹介したい。

「コバエ」という名前のハエは存在しない

コバエにはさまざまな種類がある。それぞれに応じた対策が必要だコバエにはさまざまな種類がある。それぞれに応じた対策が必要だ

コバエとは

一般的に、家の中にある食べ物やゴミにたかる小さなハエを見つければ、なんでも「コバエ」と呼んでしまいがちだが、実は「コバエ」はいくつかの種類の総称で、「コバエ」という種類のハエは存在しない。また、ハエの子どもがコバエというわけでもなく、れっきとした別の種類だ。種にもよるが、産卵から約1日で孵化し、幼虫からサナギを経て成虫となる。産卵から成虫まで2週間弱という短い繁殖サイクルが、短期間で大量発生する理由である。

ハエは、赤痢、チフス、コレラ、O-157等の病原菌のほか、皮膚疾患、目の疾患の病原体、赤痢アメーバ、寄生虫卵、ポリオウイルスなどを媒介するが、コバエといわれる種類のハエは、病原体などを媒介する恐れは少ないとされる。

しかし、ゴミ等にたかり、さらに食卓の上も飛び回るコバエは、雑菌を媒介する可能性もあるし、何より不快だ。できるならば排除したい存在だが、一口に「コバエ」といっても種類があり、発生源から対策までそれぞれで異なる。

今回、「コバエ」と呼ばれる小さなハエの中から、家庭で見かける主な4種類をピックアップして紹介する

家庭で見かける「コバエ」4種類

■ショウジョウバエ

よく見ると赤い眼をした体長2~3mmほどのハエ。台所で見るコバエのほとんどが、このショウジョウバエといわれている。英語ではfruit fly(フルーツフライ)とも呼ばれるように、家庭での主な発生源は果物や野菜。特に腐ってアルコール発酵をし始めた果物は恰好の発生源となる。その他、放置したぬか床や酒粕、酢や飲み残しのアルコールなどにも湧く。
名前の由来もここから来ており、赤い目をした伝説上の酒飲みの妖怪「猩々(ショウジョウ)」にちなんでいる。

成長速度が最大となるのは気温25℃で、春や秋に最も繁殖しやすい。1匹のメスが1日に約80個もの卵を産み、産卵から約10日という短いサイクルで羽化するため、発生源を放置しておくとすぐに大量発生してしまう。ハエ目ショウジョウバエ科だけでも3,000種以上が知られているが、そのうち最も一般的なのがキイロショウジョウバエ(学名:Drosophila melanogaster Meigen)であり、ノーベル生理学・医学賞を受賞した遺伝学者トーマス・ハント・モーガンが、実験のモデル生物としてキイロショウジョウバエを用いたのも、この短い繁殖サイクルが遺伝の実験に適していたためである。それくらい、繁殖力が強いのだ。

自作できるコバエ駆除グッズ

簡単に作れる「めんつゆ&お酢トラップ」。ある程度間口を広めにすると、コバエを捕えやすくなる簡単に作れる「めんつゆ&お酢トラップ」。ある程度間口を広めにすると、コバエを捕えやすくなる

コバエ駆除グッズは、市販の殺虫剤だけではない。家庭でできる自作の対策グッズを紹介したい。

自作グッズ① めんつゆ&お酢トラップ

用意するもの

 ・めんつゆ(またはお酢)
 ・洗剤
 ・口が広めの容器

効果のあるコバエ

 ・ショウジョウバエ(お酢トラップ)
 ・ノミバエ(めんつゆトラップ)

まずは、多くの家庭で見ることができる「めんつゆ」、「お酢」を使った対策が有効だ。その名も、「めんつゆ&お酢トラップ」である。
容器に水を張り、めんつゆ(またはお酢)と洗剤を数滴入れるだけ。めんつゆトラップはノミバエに、お酢トラップはショウジョウバエに効果が高いと言われている。めんつゆやお酢のにおいに引き寄せられたコバエが着水した瞬間、洗剤によって動けなくなるという罠である。容器の口は広いほうが、コバエを誘引しやすい。

自作グッズ② レモングラス

用意するもの

 ・レモングラス精油
 ・無水エタノール
 ・精製水
 ・スプレー容器

効果のあるコバエ

 ・ノミバエ

ノミバエには、アロマオイルも効果的だ。レモングラス精油に含まれる香り成分であるシトラールは、虫の忌避効果があるとされる。こちらも、無水エタノールにレモングラス精油を数滴入れ、さらに精製水を加えて混ぜるだけ。スプレー容器に入れて、生ゴミなどノミバエの発生源となる箇所に吹きかける。なお、プラスチック製の容器だと精油によって溶解する恐れがあるので、ガラス製の容器を使用すること。

ほかに、酢などのにおいでおびき寄せ、粘着テープをトラップとして設置する方法もある。

体長が3mmほどの小さいコバエであるから、日常生活において完璧に侵入させない、発生させないことは難しい場合も多い。本稿で紹介した予防策や、市販の殺虫剤、あるいはお手製のコバエ駆除グッズが、「コバエしらず」の快適な暮らしを実現する一助となれば幸いである。

簡単に作れる「めんつゆ&お酢トラップ」。ある程度間口を広めにすると、コバエを捕えやすくなる暑い時期は特に食べ残しの処理や後片付けはお早めに。いつも以上に「清潔」を心がけるのが一番のコバエ予防である