肉体ではなく性的志向がその人の性別を決める時代
(以下引用)
LGBTQ+のQとは?【実はよく知らないクエスチョニング・クィア】
最近、カミングアウトして活躍する芸能人も多く、LGBTという言葉を街中やメディアでよく見聞きするようになりました。
LGBTを公表している有名人まとめ 日本&海外【11/6 更新】
それにつれて、「LGBTQ+」という表記も見られるようになってきています。
一体、この「Q」とは何なのでしょうか?
実は、LGBTがレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーそれぞれの頭文字をとっているように、「Q」も「クエスチョニング」「クィア」という2つの言葉の頭文字をとっています。そして、これらの掛詞のような形でQが用いられているのです。
「クィア」という2つの言葉の頭文字をとっています。そして、これらの掛詞のような形でQが用いられているのです。
「……なるほど、それはわかった。じゃあクエスチョニング/クィアってなんだ?」と思った方。
そんな方のために、今回の記事ではクエスチョニング、クィアそれぞれの概念について、またどうして「LGBT」でなく「LGBTQ+」という表記が使われることがあるのかについて、説明していきたいと思います。
セクシュアルマイノリティに寄り添った表記を心がけたい企業関係者だけでなく、あなたの身の周りにいるセクシュアルマイノリティのためにも、すべての人に読んでいただきたい、知っていただきたい内容となっております!
クエスチョニング(Questioning)とは?
人の性自認や性的指向には、実に様々なかたちがあります。
「LGBT」にあたる、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーは、その中のほんの4つに過ぎません。
そんな中で、クエスチョニングとは、自身の性自認(自分の性を何と考えるか)や性的指向(どんな性を好きになるか)が定まっていない、もしくは意図的に定めていないセクシュアリティを指します。
たとえば、
- あえて自分の性自認や性的指向を決めない方が生きやすい
- まだ決めかねている最中
- どのセクシュアリティもピンと来ない
- 「わからない」が自然
といったような理由で、クエスチョニングを自認している場合があります。
つまり、性自認や性的指向について、「まだ決まっていないと思う」「わからない、違和感がある」「ひとつに決まるものではないと思う」などに当てはまるのが、このクエスチョニングです。
クエスチョニングは、このようなかたちの
- 性自認について指している場合
- 性的指向について指している場合
- ↑の両方について指している場合
の3パターンがあります。
また、性自認においては、クエスチョニングと似たような言葉で「Xジェンダー」というものも存在しています。
しかし、そういった名前の付いた性に自分を当てはめることで生きやすくなる人もいれば、当てはめない方が心地よいと感じる人もいます。そのための「クエスチョニング」なのです。
自分をどう定義するかは、その人の自由ですからね。
そして、そもそもセクシュアリティとはそもそも流動的なもので、変化することも当然あります。
そのようなセクシュアリティの転換期もまた、「クエスチョニング」と呼ぶことが出来ます。
例えば、「昔は男性が好きだったけど、今は男性も女性も好き」という方もいますし、「昔は自分のことを男性だと思っていたけど、今は女性だと思っている」という方も当然いらっしゃいます。
セクシュアリティを「生まれつき固定されるもの」だと思っている方が世の中にはまだ多いですが、この記事を読んだ方にはぜひ「セクシュアリティとは流動的なものである」と覚えておいていただきたいです。
かくいう筆者も、元々ヘテロセクシュアル(異性愛者)だと思っており、その後パンセクシュアル(好きになるにあたりそもそも性別を条件としない)を自覚するようになりました。
「性は絶対にひとつに決まるもの」という誤解は、まだまだ社会に蔓延っています。
「男なの?女なの?」「男が好きなの?女が好きなの?」という他人からの質問に悩まされている性的マイノリティ当事者は少なくありません。
そんな中で、「自分の性を決めなくてもよい」「“決めない”というアイデンティティー」があるということを一人でも多くの人が知っておくだけで、より包括的でやさしい社会になっていくことでしょう。
クィア(Queer)とは?
クィア(Queer)とは、元々は「風変わりな・奇妙な」といった英語圏の言葉です。
「男・女、異性愛」以外の性に対する理解がなかった時代に、「変態」の意味合いを持って、侮蔑的にゲイを表現する言葉として用いられていました。
これだけ聞くと、「え、だったら使わない方がいいのでは……?」と思われた方も多いと思います。
ですが、20世紀終盤以降、その侮蔑を向けられてきたセクシュアルマイノリティが中心となって、あえて自身を指す言葉として使うようになり、「自分たちはクィアである」という一種の開き直りの態度と共に、運動や研究が展開され始めました。
というのも、この「クィア」は、当時権利を主張していたゲイだけでなく、その運動の陰に隠れてしまっていたレズビアンやトランスジェンダー、クロスドレッサー(自身の性を表現するにあたり、異性装を行う)なども包括する概念であるため、マイノリティ全体を繋ぎとめ、連帯へと導く働きがあるのです。
今では、クィア・スタディーズという学問もあり、少しずつこの概念は認知されてきていると言えるのではないでしょうか。
また、自身を「クィア」と公言している有名人の中にはこんな方もいます。
大人気映画「ファンタスティック・ビースト」でクリーデンス役として活躍している、アメリカ人俳優のエズラ・ミラーさんです。
彼は2012年、雑誌の取材で自身が「クィア」だと表現しました。
“Queer just means no, I don’t do that. I don’t identify as a man. I don’t identify as a woman. I barely identify as a human.”
(クィアとはつまり、「NO」という意味だ。僕はそんなこと(人を男女に分けるようなこと)はしない。自分を男とも思っていないし、女とも思っていない。かろうじて言えば、単純に自分が「人間だ」と思っているだけなんだ。)
“「自分を言い表すとしたら、ゲイではない。“彼女たち”に魅かれることが多かったけど、いろいろな人たちと付き合ったし、愛に関してはオープンなんだ」
参考URL:
Ezra Miller opens up about queer identity and #MeToo
「ゲイ」じゃなくて「クィア」。ジェンダーから解放された美少年エズラ・ミラー。
性別を聞かれ「僕は単に人間だ」という力強い彼の言葉は、まさに「クィア」という言葉が歩んできた道のりというものを表現しているように感じます。
エズラさんは、かつてから「同性愛者なのではないか?」という勝手な噂が絶えず、「クィア」であると発表した時も、「同性愛者である」という誤った報道の仕方をされてしまいました。
そのような状況に対して2015年の取材では、
「(自分がクィアであるという発表は)自分が誰を、どう愛するかという話になった時、ジェンダーが男性か女性かの二択というシステムに従いたくないという意味なんだ」
と心の内を露にしています。
今の社会の文化や制度には、未だ人の性が男女や異性愛しかないことを前提に存在している部分が多く見られます。
そんな中で、マイノリティが「マイノリティとして」ではなく、「人間として」肯定的に生きることを主張したエズラさんは、他のクィア当事者を含め多くのLGBTQ+コミュニティから支持を受けました。