現今の「犯罪状況」
(承前)ここに掲載されただけでなく、その続きもあるが、ここまで転載。
3 再犯状況
(1) 再犯率
調査対象者の再犯率は,表のとおりであり,殺人17.2%,傷害致死32.9%,強盗39.1%,強姦38.5%,放火26.1%である。再犯の罪名を限定して再犯率を見ると,殺人では,粗暴犯(注1)による再犯率は5.5%,傷害致死では,粗暴犯による再犯率は21.1%であり,強盗では,財産犯(注2)による再犯率は28.4%,強姦では,性犯(注3)による再犯率は15.6%であり,放火では,放火による再犯率は7.5%であった。
また,重大事犯者は,表のとおり,満期釈放者と仮釈放者で再犯率のかい離が大きい傾向があり,仮釈放者の再犯率は比較的低いが,満期釈放者は,再犯率は高く,傷害致死,強盗及び強姦では,半数以上の者に再犯があった。
(2) 再犯期間
再犯に及んだ調査対象者について,本件犯行の罪名ごとに,再犯期間(出所から最初の再犯に及ぶまでの期間)を見ると,強盗,強姦及び放火では,再犯期間が1年未満の者が4割以上であった。また,出所後1か月未満で再犯の犯行に及んだ者は,29人(再犯者の9.0%)であり,そのうち24人は満期釈放者で,そのほとんどは頼るべき親族等もなく,頼るべき親族がある者も出所後そのもとに帰住せず,住居不定の生活を送っていた。
4 重大事犯者の処遇上留意すべき点
調査対象者について調査・分析した結果に基づき,重大事犯の罪名ごとに,重大事犯者の処遇上留意すべき点を考察すると,次のような点を挙げることができる。
(1) 殺人
殺人の事犯者は,一般的に,他人の生命や身体を尊重する意識が希薄であると考えられるが,このことは,粗暴犯の有前科者率が約3割に及んでいることにも表れている。他方で,殺人の事犯者で粗暴犯前科を有する者では,粗暴犯の再犯率は,14.5%であった(殺人の事犯者全体では5.5%)。
殺人は,動機等において相当に異なるタイプの犯行があるが,その幾つかについて見ると,まず,暴力団の勢力争い等から殺人に及んだ者は,有前科者率が79.2%と顕著に高く,粗暴犯の有前科者率も50.0%であり,他方,再犯率(45.8%)が高く,その再犯は,財産犯,薬物犯,粗暴犯と様々な犯行にわたり,規範意識の欠如や粗暴性向が大きな問題であることをうかがわせる。憤まん・激情から殺人に及んだ者は,殺人の事犯者の42.0%を占めているが,憤まん・激情を抱くに至った背景として,感情統制力の欠如や他人を暴力で支配しようとするゆがんだ考え方(なお,憤まん・激情による殺人のうち,約2割は,配偶者又は交際相手に対する犯行であった。)などの問題を有する者が少なくないことがうかがわれた。一方,親族に対する殺人の事犯者は,それ以外の殺人事犯者と比べ,前科数が少なく,再犯率も低く,介護疲れ等から親族を殺害した者では,再犯がある者はいなかった。
(2) 傷害致死
傷害致死の事犯者も,粗暴犯の有前科者率が3割を超え,他方,粗暴犯前科を有する者は,再犯率が50%を超え,粗暴犯の再犯率も40.0%と高い。
(3) 強盗
強盗の事犯者は,財産犯の有前科者率が3割を超え,他方,強盗前科を有する者及び3犯以上の財産犯前科を有する者では,財産犯の再犯率は50%以上であり,強盗の再犯率も20%を超えている(強盗の事犯者全体で財産犯の再犯率及び強盗の再犯率は24.5%,8.3%)。
本件犯行時の就労・居住状況を見ると,強盗の事犯者は,無職であった者が約60%と高く,住居不定であった者も30%を超え,さらに,強盗の再犯があった者の再犯の犯行時の生活状況を見ると,無職であった者は80%近くであり,住居不定であった者も60%を超え,就労・居住状況が不良であることが,強盗の大きな要因となっていることがうかがわれる。また,本件犯行時にギャンブル耽溺の問題を有していた者(強盗の事犯者の13.5%)は,強盗の再犯率が16.3%と高く,強盗の再犯があった者では,再犯の犯行時にこの問題を有していた者が半数近くであり,この問題も,強盗の要因になっていることがうかがわれる。
(4) 強姦
強姦の事犯者は,性犯の有前科者率が13.1%であり,他方,性犯の前科を有する者では,性犯の再犯率が37.5%にも及び(強姦の事犯者全体では15.6%),性犯罪を繰り返す者は,更に性犯罪の再犯に及ぶリスクがより大きいことがうかがわれる。
また,本件犯行が面識のない被害者宅に侵入する態様での強姦である者は,強姦及び性犯の再犯率が,それぞれ,23.3%,30.2%と高い。
なお,強姦の事犯者は,本件犯行時における有職率が高いが,強姦の再犯に及んだ者の再犯時の有職率も高く,就労状況が安定していることは,強姦の抑制要因としてはほとんど意味を持たないと考えられる。
(5) 放火
放火は,殺人と同様に,動機等において相当に異なるタイプの犯行があるが,再犯率は,本件犯行の動機が「受刑願望」である者や「不満・ストレス発散」である者で高く,そのうち,放火の再犯があった者は,孤独な生活を送り,疎外感が放火の犯行の背景になっている者が多い。
なお,放火は,その他の重大事犯とは異なり,本件犯行での受刑中に懲罰を受けたことがなかった者でも再犯率は低くなく,また,仮釈放者の同種重大再犯率(放火の再犯率)が満期釈放者と異ならないなど,個々の事犯者の再犯リスクを判断することが困難ではないかと思わせる分析結果も表れている。
3 再犯状況
(1) 再犯率
調査対象者の再犯率は,表のとおりであり,殺人17.2%,傷害致死32.9%,強盗39.1%,強姦38.5%,放火26.1%である。再犯の罪名を限定して再犯率を見ると,殺人では,粗暴犯(注1)による再犯率は5.5%,傷害致死では,粗暴犯による再犯率は21.1%であり,強盗では,財産犯(注2)による再犯率は28.4%,強姦では,性犯(注3)による再犯率は15.6%であり,放火では,放火による再犯率は7.5%であった。
また,重大事犯者は,表のとおり,満期釈放者と仮釈放者で再犯率のかい離が大きい傾向があり,仮釈放者の再犯率は比較的低いが,満期釈放者は,再犯率は高く,傷害致死,強盗及び強姦では,半数以上の者に再犯があった。
(2) 再犯期間
再犯に及んだ調査対象者について,本件犯行の罪名ごとに,再犯期間(出所から最初の再犯に及ぶまでの期間)を見ると,強盗,強姦及び放火では,再犯期間が1年未満の者が4割以上であった。また,出所後1か月未満で再犯の犯行に及んだ者は,29人(再犯者の9.0%)であり,そのうち24人は満期釈放者で,そのほとんどは頼るべき親族等もなく,頼るべき親族がある者も出所後そのもとに帰住せず,住居不定の生活を送っていた。
表1 再犯状況(罪名別)
4 重大事犯者の処遇上留意すべき点
調査対象者について調査・分析した結果に基づき,重大事犯の罪名ごとに,重大事犯者の処遇上留意すべき点を考察すると,次のような点を挙げることができる。
(1) 殺人
殺人の事犯者は,一般的に,他人の生命や身体を尊重する意識が希薄であると考えられるが,このことは,粗暴犯の有前科者率が約3割に及んでいることにも表れている。他方で,殺人の事犯者で粗暴犯前科を有する者では,粗暴犯の再犯率は,14.5%であった(殺人の事犯者全体では5.5%)。
殺人は,動機等において相当に異なるタイプの犯行があるが,その幾つかについて見ると,まず,暴力団の勢力争い等から殺人に及んだ者は,有前科者率が79.2%と顕著に高く,粗暴犯の有前科者率も50.0%であり,他方,再犯率(45.8%)が高く,その再犯は,財産犯,薬物犯,粗暴犯と様々な犯行にわたり,規範意識の欠如や粗暴性向が大きな問題であることをうかがわせる。憤まん・激情から殺人に及んだ者は,殺人の事犯者の42.0%を占めているが,憤まん・激情を抱くに至った背景として,感情統制力の欠如や他人を暴力で支配しようとするゆがんだ考え方(なお,憤まん・激情による殺人のうち,約2割は,配偶者又は交際相手に対する犯行であった。)などの問題を有する者が少なくないことがうかがわれた。一方,親族に対する殺人の事犯者は,それ以外の殺人事犯者と比べ,前科数が少なく,再犯率も低く,介護疲れ等から親族を殺害した者では,再犯がある者はいなかった。
(2) 傷害致死
傷害致死の事犯者も,粗暴犯の有前科者率が3割を超え,他方,粗暴犯前科を有する者は,再犯率が50%を超え,粗暴犯の再犯率も40.0%と高い。
(3) 強盗
強盗の事犯者は,財産犯の有前科者率が3割を超え,他方,強盗前科を有する者及び3犯以上の財産犯前科を有する者では,財産犯の再犯率は50%以上であり,強盗の再犯率も20%を超えている(強盗の事犯者全体で財産犯の再犯率及び強盗の再犯率は24.5%,8.3%)。
本件犯行時の就労・居住状況を見ると,強盗の事犯者は,無職であった者が約60%と高く,住居不定であった者も30%を超え,さらに,強盗の再犯があった者の再犯の犯行時の生活状況を見ると,無職であった者は80%近くであり,住居不定であった者も60%を超え,就労・居住状況が不良であることが,強盗の大きな要因となっていることがうかがわれる。また,本件犯行時にギャンブル耽溺の問題を有していた者(強盗の事犯者の13.5%)は,強盗の再犯率が16.3%と高く,強盗の再犯があった者では,再犯の犯行時にこの問題を有していた者が半数近くであり,この問題も,強盗の要因になっていることがうかがわれる。
(4) 強姦
強姦の事犯者は,性犯の有前科者率が13.1%であり,他方,性犯の前科を有する者では,性犯の再犯率が37.5%にも及び(強姦の事犯者全体では15.6%),性犯罪を繰り返す者は,更に性犯罪の再犯に及ぶリスクがより大きいことがうかがわれる。
また,本件犯行が面識のない被害者宅に侵入する態様での強姦である者は,強姦及び性犯の再犯率が,それぞれ,23.3%,30.2%と高い。
なお,強姦の事犯者は,本件犯行時における有職率が高いが,強姦の再犯に及んだ者の再犯時の有職率も高く,就労状況が安定していることは,強姦の抑制要因としてはほとんど意味を持たないと考えられる。
(5) 放火
放火は,殺人と同様に,動機等において相当に異なるタイプの犯行があるが,再犯率は,本件犯行の動機が「受刑願望」である者や「不満・ストレス発散」である者で高く,そのうち,放火の再犯があった者は,孤独な生活を送り,疎外感が放火の犯行の背景になっている者が多い。
なお,放火は,その他の重大事犯とは異なり,本件犯行での受刑中に懲罰を受けたことがなかった者でも再犯率は低くなく,また,仮釈放者の同種重大再犯率(放火の再犯率)が満期釈放者と異ならないなど,個々の事犯者の再犯リスクを判断することが困難ではないかと思わせる分析結果も表れている。
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