現今の「犯罪状況」
「日本刑事政策研究会」というところのホームページから転載。
長い記事(ほとんど未読で、資料用)なので前半のみ。
(以下引用)
平成22年版犯罪白書においては,特集のテーマを「重大事犯者の実態と処遇」とし,各種統計資料等を精査し,さらに,重大事犯で受刑し平成12年上半期に全国の刑事施設を出所した者1,021人(以下「調査対象者」という。)を対象に特別調査を実施して,重大事犯の発生の実態等を見るとともに,調査対象者の刑事施設出所後の再犯の有無を追跡して,重大事犯者の再犯リスクの分析等を試み,その上で,刑事収容施設法及び更生保護法の下,現在行われている重大事犯者に対する処遇を踏まえて,重大事犯に対処するための刑事政策上の課題について考察を行ったが,本稿では,この特集について紹介したい。
なお,この特集において,「重大事犯」とは,殺人,傷害致死,強盗,強姦及び放火をいう。また,特別調査において,「再犯」とは,調査対象者が,平成12年に刑事施設を出所後,平成21年末までに出所後の犯行(自動車運転過失致死傷・業過及び交通法令違反のみの犯行を除く。)により禁錮以上の刑の言い渡しを受けて確定したことをいう。
2 重大事犯の発生状況等
(1) 認知件数
罪名別認知件数の推移は,図のとおりである。殺人は,昭和29年をピークに,傷害致死は,23年をピークに,いずれも長期的に減少傾向にあるが,殺人は,最近20年間ほぼ横ばいの状態である。強盗は,同年をピークに減少傾向にあった後,平成2年から増加に転じ,15年には昭和25年ころの水準まで急増し,平成16年からは減少傾向にあるものの,21年は元年の3倍と高水準にある。強姦は,昭和39年をピークに減少傾向にあった後,平成9年から増加に転じ,15年には昭和57年ころの水準まで増加したが,平成16年からは毎年減少している。放火は,増減を繰り返し,同年には昭和57年に次いで戦後2番目に多い2,174件を記録したが,平成17年からは毎年減少している。
(2) 被疑者と被害者との関係
被疑者と被害者との関係別に最近30年間の検挙件数の推移を見ると,殺人では,嬰児殺の減少と親に対する殺人の増加が顕著であり,全体として,親族に対する殺人は,やや増加し,平成21年における親族率(検挙件数に占める被害者が被疑者の親族である事件の比率)は,48.2%であった。傷害致死の親族率も,おおむね上昇傾向にあり,同年における親族率は,49.1%であった。強姦の親族率は,低いが,16年以降上昇傾向にあり,21年における親族率は,4.6%であった。放火の親族率は,20%台で推移していたが,9年から上昇傾向にあり,21年における親族率は,33.1%であった。なお,放火では,面識のない者に対する犯行も3分の1を超えている。
親族に対する殺人及び傷害致死について,調査対象者の動機を見ると,殺人でも傷害致死でも,憤まん・激情によるものが最も多いが,そのほかは,殺人では介護・養育疲れによるものが多いのに対し,傷害致死では虐待・せっかんによるものが多い。
(3) 犯行態様等
ア 強盗の態様
平成21年における成人による強盗の検挙人員を犯行態様別に見ると,住宅強盗202人(8.5%),コンビニ強盗367人(15.5%),金融機関強盗73人(3.1%),その他の店舗強盗252人(10.6%),路上強盗455件(19.2%)であった。少年では,605人(86.9%)が非侵入強盗であり,その大部分は路上強盗である。
イ 強姦の犯行場所
平成21年における強姦の認知件数を犯行場所別に見ると,住宅内が635件(45.3%)と最も多いが,道路上等の屋外での犯行も330件あり,23.5%を占めている。
ウ 計画性の有無等
調査対象者について,本件犯行(平成12年までの受刑の原因となっていた犯行)の計画性の有無を見ると,計画性があった者の比率は,殺人39.5%,傷害致死14.5%,強盗79.3%,強姦62.7%,放火49.3%であった。また,犯行に凶器を使用した者の比率は,殺人89.9%,傷害致死32.9%,強盗75.2%,強姦23.4%であった。犯行時に飲酒していた者の比率は,殺人24.4%,傷害致死38.2%,強盗9.4%,強姦18.9%,放火30.6%であった。
傷害致死では,計画的犯行・凶器使用の者の比率が低く,突発的に犯行に及んだ者が多いのに対し,強盗では,これらの者の比率が高く,計画的に凶器も準備して犯行に及んだ者が多い。また,傷害致死及び放火では,犯行時に飲酒していた者の比率が高く,飲酒が犯行の原因の一つとなっていることがうかがわれる。
(4) 年齢構成
平成21年の検挙者を年齢層別に見ると,50歳以上の検挙人員の比率は,殺人37.5%,傷害致死31.9%,強盗16.7%,強姦10.9%,放火31.7%であり,殺人,傷害致死及び放火で,一般刑法犯(31.9%)並みに,50歳以上の者による犯行の比率が高い。また,高齢者(65歳以上の者)の比率は,近年,一般刑法犯全体で大きく上昇しているが,重大事犯でも,元年と21年を比較すると,殺人では,3.6%から13.8%に,傷害致死では,1.3%から12.3%に,強盗では,0.6%から3.8%に,強姦では,0.6%から2.2%に,放火では,2.2%から7.8%に上昇している。
(5) 有職者率
平成21年の検挙者の有職者率(検挙人員に占める犯行時に有職であった人員の比率)を見ると,殺人33.9 %,傷害致死45.7 %,強盗35.4 %,強姦63.7%,放火25.4%であり,一般刑法犯全体(34.2%)と比べ,殺人,強盗及び放火では同程度であるが,傷害致死では高く,強姦では顕著に高い。
(6) 暴力団構成員等
暴力団構成員等(暴力団の構成員及び準構成員)による重大事犯の検挙人員は,最近,減少傾向にあるが,平成21年の検挙人員に占める暴力団構成員等の比率は,殺人では19.7%,強盗では18.9%であり,一般刑法犯全体(4.9%)と比べて相当に高い。
(7) 前科
平成21年の検挙者について,前科(道路交通法違反以外の犯罪による前科に限る。)を有する者の占める比率を見ると,殺人36.3%,傷害致死40.0%,強盗48.1%,強姦38.0%,放火31.8%と,いずれも一般刑法犯全体(28.7%)と比べて高い。
調査対象者のうち前科を有する者について,最初の前科時の年齢を見ると,強盗のほか,殺人及び強姦で,最初の前科時の年齢が20〜24歳である者の比率が極端に高く,有前科者の中でも,若年時から前科を有する者は,強盗等の重大事犯に及ぶおそれがより大きいといえる。
長い記事(ほとんど未読で、資料用)なので前半のみ。
(以下引用)
平成22 年版犯罪白書の特集
〜重大事犯者の実態と処遇〜
〜重大事犯者の実態と処遇〜
青木 信人
(法務総合研究所総括研究官)
櫨山 昇
(法務総合研究所室長研究官)
1 はじめに(法務総合研究所総括研究官)
櫨山 昇
(法務総合研究所室長研究官)
平成22年版犯罪白書においては,特集のテーマを「重大事犯者の実態と処遇」とし,各種統計資料等を精査し,さらに,重大事犯で受刑し平成12年上半期に全国の刑事施設を出所した者1,021人(以下「調査対象者」という。)を対象に特別調査を実施して,重大事犯の発生の実態等を見るとともに,調査対象者の刑事施設出所後の再犯の有無を追跡して,重大事犯者の再犯リスクの分析等を試み,その上で,刑事収容施設法及び更生保護法の下,現在行われている重大事犯者に対する処遇を踏まえて,重大事犯に対処するための刑事政策上の課題について考察を行ったが,本稿では,この特集について紹介したい。
なお,この特集において,「重大事犯」とは,殺人,傷害致死,強盗,強姦及び放火をいう。また,特別調査において,「再犯」とは,調査対象者が,平成12年に刑事施設を出所後,平成21年末までに出所後の犯行(自動車運転過失致死傷・業過及び交通法令違反のみの犯行を除く。)により禁錮以上の刑の言い渡しを受けて確定したことをいう。
2 重大事犯の発生状況等
(1) 認知件数
罪名別認知件数の推移は,図のとおりである。殺人は,昭和29年をピークに,傷害致死は,23年をピークに,いずれも長期的に減少傾向にあるが,殺人は,最近20年間ほぼ横ばいの状態である。強盗は,同年をピークに減少傾向にあった後,平成2年から増加に転じ,15年には昭和25年ころの水準まで急増し,平成16年からは減少傾向にあるものの,21年は元年の3倍と高水準にある。強姦は,昭和39年をピークに減少傾向にあった後,平成9年から増加に転じ,15年には昭和57年ころの水準まで増加したが,平成16年からは毎年減少している。放火は,増減を繰り返し,同年には昭和57年に次いで戦後2番目に多い2,174件を記録したが,平成17年からは毎年減少している。
(2) 被疑者と被害者との関係
被疑者と被害者との関係別に最近30年間の検挙件数の推移を見ると,殺人では,嬰児殺の減少と親に対する殺人の増加が顕著であり,全体として,親族に対する殺人は,やや増加し,平成21年における親族率(検挙件数に占める被害者が被疑者の親族である事件の比率)は,48.2%であった。傷害致死の親族率も,おおむね上昇傾向にあり,同年における親族率は,49.1%であった。強姦の親族率は,低いが,16年以降上昇傾向にあり,21年における親族率は,4.6%であった。放火の親族率は,20%台で推移していたが,9年から上昇傾向にあり,21年における親族率は,33.1%であった。なお,放火では,面識のない者に対する犯行も3分の1を超えている。
親族に対する殺人及び傷害致死について,調査対象者の動機を見ると,殺人でも傷害致死でも,憤まん・激情によるものが最も多いが,そのほかは,殺人では介護・養育疲れによるものが多いのに対し,傷害致死では虐待・せっかんによるものが多い。
図1 認知件数の推移(罪名別)
(3) 犯行態様等
ア 強盗の態様
平成21年における成人による強盗の検挙人員を犯行態様別に見ると,住宅強盗202人(8.5%),コンビニ強盗367人(15.5%),金融機関強盗73人(3.1%),その他の店舗強盗252人(10.6%),路上強盗455件(19.2%)であった。少年では,605人(86.9%)が非侵入強盗であり,その大部分は路上強盗である。
イ 強姦の犯行場所
平成21年における強姦の認知件数を犯行場所別に見ると,住宅内が635件(45.3%)と最も多いが,道路上等の屋外での犯行も330件あり,23.5%を占めている。
ウ 計画性の有無等
調査対象者について,本件犯行(平成12年までの受刑の原因となっていた犯行)の計画性の有無を見ると,計画性があった者の比率は,殺人39.5%,傷害致死14.5%,強盗79.3%,強姦62.7%,放火49.3%であった。また,犯行に凶器を使用した者の比率は,殺人89.9%,傷害致死32.9%,強盗75.2%,強姦23.4%であった。犯行時に飲酒していた者の比率は,殺人24.4%,傷害致死38.2%,強盗9.4%,強姦18.9%,放火30.6%であった。
傷害致死では,計画的犯行・凶器使用の者の比率が低く,突発的に犯行に及んだ者が多いのに対し,強盗では,これらの者の比率が高く,計画的に凶器も準備して犯行に及んだ者が多い。また,傷害致死及び放火では,犯行時に飲酒していた者の比率が高く,飲酒が犯行の原因の一つとなっていることがうかがわれる。
(4) 年齢構成
平成21年の検挙者を年齢層別に見ると,50歳以上の検挙人員の比率は,殺人37.5%,傷害致死31.9%,強盗16.7%,強姦10.9%,放火31.7%であり,殺人,傷害致死及び放火で,一般刑法犯(31.9%)並みに,50歳以上の者による犯行の比率が高い。また,高齢者(65歳以上の者)の比率は,近年,一般刑法犯全体で大きく上昇しているが,重大事犯でも,元年と21年を比較すると,殺人では,3.6%から13.8%に,傷害致死では,1.3%から12.3%に,強盗では,0.6%から3.8%に,強姦では,0.6%から2.2%に,放火では,2.2%から7.8%に上昇している。
(5) 有職者率
平成21年の検挙者の有職者率(検挙人員に占める犯行時に有職であった人員の比率)を見ると,殺人33.9 %,傷害致死45.7 %,強盗35.4 %,強姦63.7%,放火25.4%であり,一般刑法犯全体(34.2%)と比べ,殺人,強盗及び放火では同程度であるが,傷害致死では高く,強姦では顕著に高い。
(6) 暴力団構成員等
暴力団構成員等(暴力団の構成員及び準構成員)による重大事犯の検挙人員は,最近,減少傾向にあるが,平成21年の検挙人員に占める暴力団構成員等の比率は,殺人では19.7%,強盗では18.9%であり,一般刑法犯全体(4.9%)と比べて相当に高い。
(7) 前科
平成21年の検挙者について,前科(道路交通法違反以外の犯罪による前科に限る。)を有する者の占める比率を見ると,殺人36.3%,傷害致死40.0%,強盗48.1%,強姦38.0%,放火31.8%と,いずれも一般刑法犯全体(28.7%)と比べて高い。
調査対象者のうち前科を有する者について,最初の前科時の年齢を見ると,強盗のほか,殺人及び強姦で,最初の前科時の年齢が20〜24歳である者の比率が極端に高く,有前科者の中でも,若年時から前科を有する者は,強盗等の重大事犯に及ぶおそれがより大きいといえる。
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