女性の「理想的ヒーロー像」に見る自己保存本能
つまり、お互いに愛し合っていることが大事だ、と言いながら、その理由は、実は生物学的な自己保存本能が底にあるからだ。愛し合っていれば、ほぼ安全に自分はこの雄に守られるだろう、というわけである。放っておけば男というのはあちこちに種を撒くだろうが、自分を愛している男なら、ほぼ永続的に自分の所属物になるだろう、というのが女性の「恋愛」の根底にある、という言い方は嫌味に聞こえるだろうが、それが嘘だと言うなら、女性はなぜ恋愛対象の条件に強さ(権力)やカネ(金力)を求めるのか。なぜ「白馬の王子様願望」があるのか。
実は女性が男性に求める「望ましい容姿」も、権力や金力と結びついていると思う。つまり、白人種が世界の支配層であるから、彼女たちは白人種的容姿を男に望むのだろう。
(以下引用)
アル・クーパーらがスウェーデンで行った「性的オンライン活動についてのアンケート」によると、主な活動として「エロ画像・動画を見る」と回答した割合は、男性は37%で最も人気だったのに対し、女性は6%にすぎなかった*3。女性に人気なのは「恋人やセフレと連絡を取る (21%)」*4や「同じ性的嗜好の人達とチャットする (17%)」*5である。
そこでオーガスとガダムは「エロ文章を読む (9%)」*6に目をつけた。二人は1,878人の作家による10,344作品のロマンス小説の全文を抽出し、ヒーローの体がどのように描写されているか調査した。ヒーローのパーツを表す頻出語トップ7は以下となった。
- ほお骨
- あご
- 眉
- 肩
- ひたい
- ウエスト
- ヒップ
また、同じ調査でヒーローのルックスを表す形容詞の頻出語トップ7は以下となった。
- 引き締まった
- 美男子の
- 金髪の
- 日焼けした
- 筋肉質の
- 男らしい
- 端正な
以上を見てわかるように「尻 (ヒップ)」こそあるが、「股間」に注目するワードは無い。また「大きな」や「立派な」といった形容詞もトップからは外れているのである。したがってアンチ巨乳派がよく持ち出すような「股間を強調した巨根のキャラ」は女性における需要が少ないのである*7。
女性が性的に消費しがちな男性の身体的特徴は以上だが、「外見」という観点では抜けている要素がある。それは男性の立場を示すものだ。
18禁のハローワーク
女性に人気の職業とはなんだろうか。正確に言えば「女性が性的に消費する人気の職」のことである。ここでもまたロマンス小説が役に立つ。
アンソニー・コックスとマリアンヌ・フィッシャーは1949年から2009年までのロマンス小説、計15,019作の作品名を分析した*8。この調査結果の中に、頻出する職業トップ20がある。これから男性の職業を抜き出したトップ10が以下だ。
職業 | 頻度 |
---|---|
医師 | 388 |
カウボーイ | 314 |
ボス | 142 |
王子 | 122 |
牧場主 | 79 |
騎士 | 77 |
外科医 | 77 |
王 | 55 |
ボディーガード | 41 |
保安官 | 40 |
「カウボーイ」や「牧場主」「保安官」あたりはいかにもアメリカらしい。以降には「兵士」「弁護士」「海賊」と続く。
この結果について著者らは、「資産」か「たくましさ」が求められていると分析している。また、「ボディーガード」や「保安官」「弁護士」などは庇護のイメージから「たくましさ」に通じるのではないかと考えている。
したがって女性向けの性的なキャラを作るのならば、ただのイケメンではなく、「金持ち」*9で「強者」の印象を与えるようなデザインであることが望ましい。