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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

「人民は政事の実体にして政事は人民の虚影なり」

高島俊男の「漢字雑談」の中に、中村正直訳「西国立志編」中のミルの言葉を紹介した部分がある。こういうものだ。原文のカタカナ部分をひらがなにするなど、表記は適当に変える。

「邦国(注:ここではイギリスを指すか。)の政事は、特に人民各自一己のもの会衆して放つところの回光返照(かえりうつるひかり)なり。蓋し人民は政事の実体にして、政事は人民の虚影(むなしきひかり)なり。」

この「人民は政治の実体で、政治はその反映である」というのは、民主主義の本質を見事に言っていると思う。現代の政治は、「政治家」という虚像が異常に肥大化しているわけだ。
政治家というのは代議士と言うように、「人民に代わって政治を議する」存在であり、その使命は人民の意志を政治に反映させる以外に無い。だからこそ代議士はrepresentativeと言うのである。
すなわち、人民の意志を議場において「再び(re)」「開陳(presentation)する」のがその役割であって、代議士自身の意志や野心を政治で実現するのは代議士の本来の在り方ではない。
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