ここでは磁石と磁界・電磁誘導についてご紹介します。
磁石と磁界
磁石に方位磁針を近づけると、磁針が振れますが、これは磁石から磁針に力が働いているからです。この磁石の力を「磁力」と言い、磁力が働いている空間を「磁界」と言います。
磁界の中に磁針を置いた時に、磁針のN極が指す向きを「磁界の向き」と言い、その向きをつないだ線を「磁力線」と言います。磁力線を表す時には、磁界の向きを示す矢印をつけます。磁力線の間隔が狭いところほど磁界が強いことを示し、磁力線が大きな弧(こ)を描くところほど磁界が弱くなります(図1)。鉄心に導線を巻いて電流を流すと電磁石になりますが、電磁石が磁石と同じ働きをするのは、導線に流れる電流が磁界をつくるためです。
電磁石で真っ直ぐな導線に電流を流すと、導線の周囲に同心円で磁界ができます。磁界の向きは、電流の向きによって決まり、磁界の強さは、導線に近いほど強くなり、電流が大きいほど強くなります。導線をリング状にすると、輪の中心に磁力線が集まり磁界が強くなります。リング状のものをいくつか重ねてコイルにすると、さらに磁力が強くなります。
磁界と電流
磁石がつくる磁界の中で電流を流すと、磁石の磁界と電流による磁界が、お互いに力をおよぼしあいます。磁界の中の電流に働く向きは、電流の向きと磁界の向きのそれぞれに対して垂直になります(図2)。磁界を強くしたり、電流を大きくすることで、この力も大きくなります。こうした磁石の磁界に電流を通して力を働かせることを応用したものにモーターがあります。また電流の向き、磁界の向き、力が働く向きをそれぞれ左手の人差し指、中指、親指を互いに垂直に向き合わせることで表現できます。この法則は、イギリスのフレミングが提唱したため「フレミングの左手の法則」と言います。
これとは反対に、導線や磁石を動かして電流を発生させることもできます。導線の周囲の磁界が変化すると、導線に電圧が生じて電流が流れます。この現象を「電磁誘導(でんじゆうどう)」と言い、このときに流れる電流を「誘導電流(ゆうどうでんりゅう)」と言います。発生する誘導電流の向きは、導線や磁石が動く向きや磁界の向きによって異なります。また、導線や磁石を速く動かすことで誘導電流は大きくなります。この誘導電流を利用したものに、発電機があります。発電機は磁石とコイルを利用して、どちらかを連続で回転させることで誘導電流を連続して得られるしくみです。身近なものでは自転車のライトなどがあります。
直流と交流
乾電池で豆電球を点灯させるとき、電流の方向は+極から-極へと一方通行になります。乾電池では+極、-極が決まっているため、流れる電流の向きは変わりません。電化製品などコンセントを使う電気器具は、電灯線が使われます。電灯線とは、送電線から家庭や学校、会社などに送られる電流です。この電灯線は電流の向きが交互に変わります。電気器具のコンセントやプラグに+極、-極の表示がないのもこのためで、どちらの向きでも一定の電流を得ることができるようになっています。
乾電池や電灯線の電流の流れを、オシロスコープやコンピューターで見ると、乾電池の電流では流れる大きさは変化しませんが、電灯線の電流は流れる大きさが波形に変化します。乾電池のように、電流の向きや大きさが一定して変わらない電流を「直流」と言い、電灯線のような電流の向きや大きさが周期的に変化する電流を「交流」と言います。
家庭や学校などに送られる電灯線は、1秒間に電流の向きが逆になって、また元の向きにもどる回数(周波数)が地域によって決まっており、東日本では50Hz、西日本では60Hzとなっています。
電気は、発電所の巨大な発電機で大量に発電し、数十万Vの大きな電圧で変電所に送ります。交流は電圧を容易に変えることができ、変電所では変圧器によって電圧を6600vに下げて、電線を使って電柱にある柱上変圧器に送ります。柱上変圧器ではさらに電圧を100Vか200Vに下げて、各家庭や学校、会社などに届けられます。