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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

医者への長く険しい道

「大摩邇」所載の記事で、長いので前置きは無し。

(以下引用)

小説やドラマの舞台にたびたび選ばれる医療の現場。そこにはしばしば研修医や指導医といった医師たちが登場しますが、彼らの「正確な立場」をご存知でしょうか。今回のメルマガ『バク@精神科医の医者バカ話』では、現役の精神科医で内科医としての実績を持つバク先生が、医学生が医者になるまでの道のりを紹介するとともに、研修医、専攻医、専門医、指導医それぞれについて簡潔に解説。さらに臨床能力が高い医師と「確実にヤバい」医者の見分け方もレクチャーしています。

医学生はいかにして医者になるのか!?(研修医、専攻医、専門医、指導医って何!?)

皆さんこんにちは。今日は割と医師以外と話をしていて通じない「研修医、専攻医、専門医、指導医」の話をしようと思いました(前回のメルマガでも少し話に触れました)が、まずそれより手前の医師免許の話からした方が良い気がしたので以下予定外に資格取得の話からします。

医者になるまでの道のり


皆さんご存知の通りですが医師国家試験を受けるには医学部(6年間)に行かなくてはなりません。そして

「卒業見込み」という資格で6年生の時に医師国家試験を受けます(国家試験に落ちた所謂国試浪人は除く)。

よく「医師国家試験って合格率90%以上で楽勝な試験なんでしょ?」と言われますが、その試験を受ける前に

  • 医学部卒業(見込み)

を満たしていないとそもそも受験資格自体がありません。時々日本以外の医学部の卒業証で日本の医師国家試験を受験される方もおられますがかなりレアなケースなのでここでは割愛します。

勘のいい人なら「あれ?6年の途中で受験(試験は在学中2月に実施)するってことは卒業できなかった人はどうなるの?」と思われるかも知れません。理論上、その場合は医師国家試験に合格していても、医学部を卒業できていないので合格は失効します。

しかしここで下世話なお話を書きます。各医学部(特に私立)は「医師国家試験合格率○%!」というのが高ければ高いほど宣伝になります。なので「この生徒は絶対このままでは国家試験に受からなさそう……」という生徒は卒業させず、受験自体もさせません(普通に卒業試験に落ちたら卒業できません)。

なのでそもそも医師国家試験を受験している人間にはかなりバイアスがかかっており、その集団での合格率90%以上は普通の一般人全体で受験した場合相当低い合格率になると思われます。

そんな厳しい国家資格のうちの一つである医師国家試験を受験し合格すると即医師免許をもらえ…ません!!しょんぼり!

合格したことを確認したのちに厚労省に医師免許申請用書類を提出し、「医籍」に登録された後(この時発生するのが「医籍番号」という医師免許の番号)にもらえるものです。

私は自分の受験している資格についてその時にならないと調べない(もしくは知らなさすぎて周囲に教えてもらう)タイプだったので、医師免許申請用書類の登録費に6万円もかかることも知らず、倒れそうになりました。

因みに他の業種でも登録費は必要です。歯科医師は医師と同じで6万円、薬剤師は3万円、看護師、保健師、助産師、臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士が9,000円。

高そうと思って調べた弁護士が6万円。やはり高めですね。

完全に予想外でめちゃくちゃ高かったのが弁理士さん(知的財産を守るお仕事。特許庁の管轄)。実務修習費用で11万8,000円かかり、その後の弁理士登録申請前に納付する必要のある登録免許税(税なの?自分は完全に畑違いだからわからないけどこう書いてあった)が6万円。これまた登録申請前に納付が必要な登録料が3万5,800円。そして弁理士として活動し続ける場合永遠に払い続けなくてはならない「会費」が毎月1万5,000円、でした。

次ページ:無免許医ブラック・ジャックが生まれた原因

完全に話がそれましたが、そんなこんなで無事に医師免許をゲットだぜ!となったら今度は初期研修制度が始まります。

この制度は厚労省HPに変革が載っているのでリンクを貼っておきます。

● 医師臨床研修制度の変遷

めちゃくちゃ簡単に言えば

1)(昭和21年)医学部を卒業後、医師国家試験の受験資格を得るために卒業後1年以上医療に従事しろ(義務)←これがよく聞くインターン制度。無給で医者の仕事を1年以上しないと医師国家試験も受けられなかったのですが、これがブラック・ジャックが生まれた原因(ブラック・ジャックは無免許で医業に従事してましたが別にこの時代はそれが出来てしまう制度でした)。

2)インターン制度はやっぱやめよ!(昭和43年)流石に医学部卒業したらその後すぐに医師国家試験を受験できるようにしよう!でも2年くらいは臨床研修しましょう!(努力義務)←この制度が次にあげる平成16年まで継続していたため「内科や外科を診たことがない精神科医や皮膚科医」などが発生。

3)努力じゃあんまりやってくれないっぽいから平成16年からは「新医師臨床研修制度」を作ったよ!2年間の研修が「必修」になったよ!←イマココ

という感じです。ですが、こちらのリンクもご覧ください。

● 医師臨床研修に関するQ&A(研修医編)

Q:臨床研修を受けなかったらどうなるの?

医師法第16条の2第1項の規定では、診察に従事する医師は臨床研修を受けなければならないこととされています。 臨床研修を修了せずに診療に従事することはこの規定に違反することになります。

また、医師法の規定により、臨床研修を修了していなければ病院又は診療所の管理者となることができなくなります。さらに、診療所を開設する際に、届出ではなく都道府県知事等の許可が必要となります。(厚生労働省HP、上記リンクより転載)

ど、どういうこと?意味がわかんねえ?となりましたが他の質問にヒントがありました。「将来臨床に携わる予定がない(研究をしたい)が2年間臨床研修を受けねばならないか?」の問いには「受けなくて良い」という答えが載っています(同ページ参照)。

つまり上記の医師法云々については

「臨床研修を受けていないと(指定された研修機関病院以外での)診療行為などは一切できない。(医師法違反)」

「病院や診療所の管理者になれない」が「診療所の開設者には(都道府県の許可があれば)なれる」

ということです。開設者は別に医療行為ができなくても良いですから(病院を開設する薬剤師や他職種の人は結構います。医師を雇われ院長にするタイプの開業もたくさんあります)納得です。

まぁなんにせよ研究以外したいなら臨床研修を修了しないと医者の業務のほとんどができないということらしいのですが一部例外があります(今回は文字数的に割愛しますが今度また書きます!)。

さて長々話をしましたが、世間で言われている「研修医」は厚労省の指定した研修病院で2年間研修している医師のことを指すことがご理解頂けたかと思われます。

では3年目以降はどうなるのか?というと今は結構自由です。

次ページ:「専攻医」と「専門医」はどう違うのか

卒後3年目以降の医師の進路は無限大


特に専門を定めずに色々なバイト(医師にはいろんなバイトがあります)で生きていくもよし、専門でやる科を決めて修行に入るもよし、医師を辞めるもよし!自由です。

ここで専門の科を決めて学ぶこととなった医師を「専攻医」と言います。なので医師が全員研修医の後に専攻医になるわけではありません。専攻医は概ね指導してくれる医師から教えてもらいながら色々な臨床経験を積みつつ、学会に入会することが多いです。

たとえば「よし、これからは俺は精神科医として研鑽を積むぞ!」となったらやはりある程度やってきた結果を形に残したいかなとは思います(私は思いました)。

そうなると1日も早くしないといけないことがあります。それは学会入会です。精神科だと日本精神科学会にとにかく早く入会した方が良いです。

何故なら専攻医の次に目指すのは皆さんがよく聞く「専門医」なのですが、専門医には「その学会に所属し、研修を開始してから3年以上」という条件を満たさなければ専門医試験の受験資格すら発生しません(その他経験症例を集めたり色々するので思い立ったら即受験!とはなりません)。しかも指定された「指導医」という資格を持っている「専門医」がいる「学会が認定した専門医研修病院」で研修を受けて、一定数以上の症例を指導医の指導のもと治療を行ったことをまとめたレポートを提出するナドナド…結構計画的に生きていないと満たせなさそうな条件をクリアして、初めて「専門医試験」を受験できます。今も制度は難化傾向にある中、正直早く受けたほうが絶対楽(一番最初の試験だけは極端に難しかったりしますが)なのでこれを読まれている医学生さんや研修医の方がおられたら(居るのか?)、専門が決まったら毎年計画的に最短で資格を取得できるように動きましょう!

専門医とか指導医とか

なんだか話がそれましたが、サラッと「指導医」の話が出てきました。今までの話で

  • 医学生は医師国家試験を合格した後、新臨床研修を受けて研修医になる。(研修修了したら診察行為を行えるようになる)研究をしたい場合は別に受けなくて良い。
  • 研修修了後、自分の専門分野に進むと「専攻医」になる。専門分野をしっかり学ぶために学会の認定している病院で「指導医」に指導を受け、専門医試験を受験し合格したら「専門医」になる。

という流れでしたが、突然出てきた指導医ってなんじゃこれ?ですね。指導医は「専門医」であり、かつ更に一定の臨床経験年数があり、指導講習を受けた医師(移行期間中の場合は1回目は指導講習免除)が学会に認定されてやっと「指導医」になります。

つまり順番?としては「医学生→国家試験合格→研究者or研修医(2年)→専攻医or専門を持たない医師→専門医→指導医…」という風に右に行けば行くほど何らかの試験や講習を受けているということがわかるかと思われます。ただし途中で「早く取ったほうが有利」と書いていた通り、どこの科の専門医でも実はそこまでやってないのに専門医を取得できている医師もいます。

それは制度の切り替わりの狭間にいた医師です。今まで20年これ一本でやってきた!みたいな先生に「制度を変えるので」と試験を受けるために色々しろと言うのも言いづらいし、そもそも指導医がいない初期の初期ってどうしたの?ってなりますよね。まぁ、ある一定の年度以上の先生は無試験……いや、今までの功績を認められ、専門医になっていたりします。小さい声で言うならば初めて受診するときにはやはりある程度若い(アラフォーアラフィフくらい)の先生が一番持っている資格と勉強量がマッチングしている可能性が高いのでオススメじゃないかなぁと思ったりします(先に亡くなられる可能性を考えると、なるべく若めの先生を主治医にした方がいいですし……)。

次ページ:肩書ではない。臨床能力が一番高い医師とは

まとめ

なんだかんだ書いてきましたが、結局一番臨床能力が高いのは専門医を持っていなくても、常に新しい治療方法を勉強し続けているお医者さんだとは思います。

もし受診している最中に「新聞でこういう治療方法があると読んだんですが」と話をしてみた時に「ああ、あの治療に関しては……」と即答できなくても、「そういう治療法が報道されているんですね、すみません不勉強でした。次までに調べておきます」と言う反応をされる先生ならとても良い先生です(新聞もよく読んだら「治療法ができた」ではなく、治験が始まった、だけかもしれません。しかしそこで否定しないでチェックをすると言える先生は絶対いい先生です!)。

確実にヤバいのは「患者のくせにそうやって治療法とか言ってくるってどう言うつもりなんだ!?そんなにしってるなら自分で治療したらどう!?」と逆ギレしてくる狭量(わかりやすくいうと「ケツの穴が小さい」)な医師です。大体において自信がない人ほどキレやすいことが多いので、そう言うことを言われたら「素人のくせに嫌なこと言っちゃった……すみません……」とか思わず、「ケツの穴の小さい医者だなぁ」と聞き流してください。専門医を持っていてもこんな対応する医者に命を預けるなんてナンセンスですからね……(そこしか病院がない場合は本当に困る問題ですが……)。

さて今回はドラマとかでよく聞く研修医とか指導医とか専門医などのめっちゃ簡易版説明をさせて頂きました。学会によって色々と異なる点もありますが、大体の学会は学会のHPにアクセスするとどこにどんな専門医がいるかを公開しています。気になる場合はチェックしてみても良いかもしれません!では今日はこの辺で失礼いたします。

次回は「産業医ってなんぞ?(休職した後の産業医面談のコツ)」で予定しております(予定は未定なので変わる可能性もありますのでそこはお許しください!)。ではまた次回お会いできることを楽しみにしております!

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