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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

仕事上の権力を悪用する連中

無著名記事なので、書き手が男性か女性か分からないが、書かれた事例のすべてが「枕営業」でもある、という事例をわざと集めている気がする。現実には女性側にはまったく過失の無いパワハラやセクハラの事例もたくさんあるだろうに、単に書き手の見聞が少ないのだろうか。まあ、もともと「表に出にくい話」なので、実例を身近な知人から探すのが困難だったのだろう。
出版界でのセクハラが厄介なのは、それがパワハラと並行している事例が大半だからだろう。つまり、犯行者が仕事上強い立場で被害者が弱い立場であるわけだ。しかも、女性側がそのセクハラを(仕事上のメリットを失いたくないために)受け入れたら、それはお互いの合意のあった枕営業ということになり、犯罪事件として立件できなくなるかと思う。

(以下「弁護士ドットコム」より引用)

オフィスで性行為「素敵な夜だったね」に悔し涙…「メディア業界」のセクハラ、ひどすぎる実態

オフィスで性行為「素敵な夜だったね」に悔し涙…「メディア業界」のセクハラ、ひどすぎる実態
画像はイメージです( ThanhAn / PIXTA)

メディア業界の驚くべきセクハラの実態を暴いたのは「週刊文春」だった。幻冬舎の編集者が、既婚でありながら、女性ライターのA子さんに「絶対変なことしないから家に行きたい」とメッセージを送り、強引に体に触れてくるなどしたという。

A子さんは、「週刊文春」の取材に「編集者とライターという圧倒的な立場の差があるから強く断れなかった」と話している。

筆者もメディア業界に属する人間である。このように、立場の違いを悪用したセクハラがあることは、度々耳にしてきた。改めて実態を明らかにしたいと思い、業界内でセクハラ被害にあった3名の女性に話を聞いた。(ジャーナリスト・肥沼和之)

●編集長「膝の上に座って」

フリーライターの幸子さん(37歳・仮名)は、某メディアの編集長B氏と、望まない形で性的関係を持つことになった。二人が知り合うきっかけは、あるパーティー会場。B氏にもそのメディアにも憧れていた幸子さんが、過去に書いた記事を見せたところ、後日B氏から執筆の依頼が来る。念願がかなったと幸子さんは大いに喜んだ。

やり取りは別の担当編集としながら、記事を寄稿するようになった幸子さん。あるときB氏から、打ち合わせをしたいからと、会社に来るよう言われた。指定された平日の19時にオフィスに行く。担当編集やほかの社員はすでに帰宅したようで、B氏以外オフィスに誰もいないのが気になったが、深く考えなかった。

「B氏は著名な方で、すごく正義感が強く、誠実なイメージで通っています。社会的にも立派なので、安心して彼専用の仕事部屋に入りました」

打ち合わせ後、尊敬する方を前にした幸子さんは、いろいろな質問をしていった。最初は真摯に応えていたB氏だが、やがて「パブリックなことはここまで、これからはプライベートの時間」という言葉と共に態度を豹変させた。

ワインが出され、幸子さんは勧められるままに飲んだ。席を立ったB氏が、オフィスの出入り口に施錠がされているか確認している様子を見て、初めて不安を覚えた。折を見て帰ろうと思ったが、タイミングをつかめないでいると、「膝の上に座って」と言われた。嫌だったが、幸子さんは従わざるを得なかった。

「拒否して逃げることも考えました。ただそうすると、このメディアで書けなくなってしまう。それはどうしても嫌だったんです。それに、『こんなに立派な人がなぜ?』という驚きで内心動揺し、どうしようか迷っているうちに、流されるまま膝の上に座ってしまいました」

B氏はそのまま幸子さんを抱きしめた。奥さんの写真が置いてあるデスクから、B氏は避妊具を取り出し、幸子さんを襲った。そして、その翌日、「昨日は素敵な夜だったね」とメールが来たのだ。幸子さんは改めて落胆したという。

「私も楽しんだって思われたのか……と感じて、すごく残念に思いました。ああいったことを求めてきた相手にもがっかりしましたが、断らなかった自分にも同じ思いでした。仕事を失いたくないからと、私が要求を受け入れたことは、枕営業と同じなのかもしれないって」

●「本を出したい」という夢につけこまれ

「本を出したい」という夢につけこまれ、編集者から都合の良い関係を強いられたのは、ライターの真理子さん(30歳・仮名)だ。真理子さんは、知り合いだった編集者D氏から依頼を受け、ある人にインタビューをした。D氏も同席したその場で、ちょっとした下ネタのやり取りがあり、真理子さんは照れた素振りを見せた。それがきっかけか、取材後にD氏からホテルへ誘われた。真理子さんはそれを受けてしまう。

「当時は仕事のストレスがあり、出会いもなかったんです。自己肯定感が低かったこともあって、誘いに乗ってしまった。その後、Dとはセフレの関係に陥りました」

真理子さんは恋愛感情を持つようになったが、D氏にその気はなかった。関係がずるずる続くなか、真理子さんが連載していた記事が話題になる。編集者として敏腕で通っていたDは、その連載を書籍化したいと持ち掛ける。本を出すことが夢だった真理子さんは、喜んでその提案を受けた。

だがプライベートで、恋愛感情を伝えると、D氏は態度を豹変させた。「僕にすがりついているようなら本は出さない」と言われ、真理子さんは泣く泣く自分の気持ちを押し殺した。

「この人に従わないと本を出せないと思い、『もう恋愛感情はありません』と答えました。すると彼はころっと態度を変え、書籍の話は進みました。明らかに権力を利用していました」

その後も打ち合わせをするたびに、D氏はホテルに誘ってきた。編集者の立場を利用し、真理子さんを彼女ではない、都合の良い存在として扱っていたのだ。またD氏は、本命の彼女の写真をSNSによくアップしており、見るたびに辛くなった。無事に書籍は出せたが、真理子さんは精神を病み、心療内科に通院することになる。

「本を出せなくなるかもしれない恐怖に怯え、Dの言うことに従ってしまいました。彼は非常に女癖が悪く、今までも女性関係のトラブルが絶えなかったことを、いろんな人へのリサーチで知りました。今はDに対して怒りと恨みしかありません」

●新聞社の派遣社員「セクハラを断るという選択肢はない」

某新聞社で、派遣社員として事務をしている梓さん(33歳・仮名)は、セクハラが当たり前の風土に悩まされている。職場は40~50代の男性が中心で、女性は20~30代の派遣社員が数名だけ。

男女、年齢、雇用形態などあらゆる面で格差があるためか、性的嗜好を聞かれる、ホテルに誘われる、など珍しくなかった。梓さんが入社前のことだが、正月には女子社員が社長室に集められ、ホステスさながらにお酒をつくらされた。社長の入れ歯が入ったお酒を飲まされた女子社員もいたという。

「セクハラを断る、という選択肢はこの会社にありませんでした。やられた方は、笑顔でうまく受け流さないといけなかったんです」

こんなこともあった。仕事中、男性社員たちが自慰行為の話をしていた。耐えかねた梓さんが、先輩の女子社員に相談すると、「そんなことで?」と取り合ってくれない。派遣会社にも相談したが、改善はされなかった。辛くて夜にひとりで泣いたこともあったが、今は現状を半ば諦めて受け入れている。

「働く場において、仕事のこと以外で悩むのは、圧倒的に女性の方が多いと思います。当たり前に行われるセクハラと、うまく折り合いを付けていくしかないのかなと。『声を上げればいい』『正社員になればいい』と言う人もいますが、できない人もいることをわかってほしいです」

●この状況が異常だと認識するべき

最後に、筆者が聞いた卑劣なセクハラも紹介したい。

出版業界に携わる男性が経営するバーがある。そこに客として何度か行った女性が、小説を書いてみたいと話すと、後日オーナーから「教えてあげる」と店に呼ばれた。その日は定休日で、店内は女性とオーナーの二人きり。客が入って来ないよう、ドアの前にはカラーコーンが置かれていた。最初は小説の書き方を教えてくれたが、やがて無理やりキスをされた。ショックと気持ち悪さで、女性は帰ってから号泣し、長い時間口を洗ったという。

立場の違いに加え、出版カルチャーを利用した、悪質極まりない行為である。筆者もバーを経営しており、本や出版に関心を持つお客さんとよく接しているが、こうはなりたくないと改めて誓った。

仕事をあげる人と、もらう人。年齢や役職が上の人と、下の人。正社員と、非正規社員……このような立場の差を悪用し、理不尽な要求をされた場合、どのように対処すればいいのか。梓さんが言うように、誰もが声を上げたり、強い態度で立ち向かったりできない。

逆らうと、したいことができなくなる、仕事や収入を失う、業界で干される、という怖さも付きまとう。冒頭の編集者の誘いを、A子さんが強く断れなかったのは、まさにこういった事情があるからだ。

しかしSNSには、今回の件について、メディア業界の人たちからも、A子さんを非難する投稿が多く上がっている。「拒否すればいい」「家にあげるなんて考えられない」と簡単に切り捨て、弱者側の辛さや葛藤を、理解も想像もしようとしない風潮が、業界に根強くあると痛感した。

メディアの重要な使命のひとつは、弱者に寄り添い、強者の不正や権力乱用に目を光らせ、平等な社会づくりを支えることである。その業界で確信犯的に、あるいは無自覚にセクハラが横行している。そしてときに、被害者は声を上げることすら許されず、勇気を出して告発しても、嘲笑やバッシングというセカンドレイプに見舞われる。

メディアに携わるすべての人は、この状況が異常ということを自覚し、あるべき正しい姿を真剣に考えていく必要があるのではないだろうか。

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