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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

記憶力の功罪

私は記憶力が絶望的に悪くて、自分の人生をほとんど覚えていない。むしろ、本で読んだことのほうが覚えているくらいだが、それは不幸なのだろうか。仮に、私の記憶力が優れていたら、私は自分の人生の苦痛や恥辱や悲しみをすべて覚えることになり、それで私が生き延びることができたかどうか、確かではない。動物には過去と未来を考える能力が無いと言うが、私もその点では同じで、だから悩むことが少なくて済んだのではないかと思う。
レイ・ブラッドベリに「たんぽぽのお酒」という短編集があり、その中に、自分の人生のすべての出来事を細大もらさず覚えている人間の話があり、それは一種のタイムマシンではないか、というのがその作品のテーマだったと思うが、世の中には実際、ものすごく記憶のいい人はいる。
だが、それが幸福かどうかは、にわかには判断できないと私は思う。
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