複式簿記の暗示する「個人と法人の分離」と「個人の無責任化」
すなわち、Aさんにとっての複式簿記が法人化することによって、Aさんが「貸出」したお金は、法人にとってはAさんへの負債(債務)なのである。こう理解することで「なるほど」となったのだがどうだろうか。
ということを知っているだけで、高校生レベル、いや、一般大学生レベルの知識だと思う。上記のことは、ある意味「個人の無責任化」である。法人の過失や責任は個人に及ばない。いくらでも金持ちは法人を利用して悪事(経済的犯罪)が行えるわけだ。別の見方をすれば、ここに資本主義社会の必然的バブル化と庶民の必然的貧困化の原因がありそうだ。
(以下「金持ちは国家を相手に金を貸す」から引用)
金融の構造 複式簿記(B/S)と信用創造
いままで解明してきた金融の構造。
金融の構造① 銀行システム(中央銀行+銀行)と債務マネー
金融の構造② 債務マネー → インフレの構造と金利
その中で、お金のやりとりは中央銀行も銀行も複式簿記(B/S)で貫徹されている。
複式簿記を見ていると、いつもよく分からなくなる。
借り方(資産)=貸し方(負債)
☆なぜ、借り方の部分を資産と呼ぶのか?国債や金は資産の部に入っている。
特に分からないのが、中央銀行で言えば、紙幣発行や当座預金、資本金は貸し方(負債)に入っていること。
資本本金の割合を示す、自己資本比率は5%程度でしかない。。
こらは銀行家・金貸しの立場になるとわかる気がする。
原点は金の預かり証。
金を元手に、預かり証を発行(信用創造)するということ。
近代は、国家の借金証書:国債を元手に紙幣を発行。
しかし、その金も国債も借りたものを元手にして、債券(預かり証や紙幣)を発行しているにすぎないという欺瞞。
自己資本は5%程度でしかない(なぜ、自己資本が負債の部なのかという疑問も)。
リンク より以下引用
――――――――――――――――――――――――――――
安西正鷹『お金の秘密』を読む(3)われわれはどうやって「いかがわしさ」に馴れさせられたか(前)
この著のいちばんの眼目は、第3章から第5章である。それぞれ「永久寄生者の詐術・信用創造のカラクリ」「複式簿記という魔術」「詐欺の芸術品・イングランド銀行」、自分なりによく納得したくてまとめてみた。
先に、実質価値と名目価値の乖離の少ない秤量貨幣が、国家の統制の下、無文銭から銀銭を経て銅銭に到り、その間実質価値は1/100〜1/150になることを見た。さらに現在の1万円札はといえば、ほぼ1/500。それをいかがわしいとする感覚は、われわれにはほぼない。
《貨幣制度の歴史はまさしく、詐欺的金融手法の進化の歴史である。》(106p)
《お金を支配する者はお金の本当の仕組みを隠蔽するかたわら、似非学説やプロパガンダの流布に躍起となっている。真相究明の鍵を握るわれわれの直感力は、彼らの必死の工作で機能不全に陥っている。》(102p)
さて、お金の仕組みのいかがわしさは、「信用創造」において極まる。すなわち、銀行から借金して通帳に書き込まれる数字に至っては原価も何もない。しかしその数字が記入されるやいなや、その対価として、その数字に利息を加えて「具体的なはたらき」によって小さくしてゆかねばならない義務が生ずる。このことのいかがわしさが「複式簿記」の仕組みから解明される。
複式簿記において、左側を「借方」といい、資産(債権)を記入する。右側を「貸方」といい、負債(債務)及び資本・利益を記入する。なぜ資産が借りで、貸しが負債なのか。ここに複式簿記が訳が分からなくなるつまずきのもとがある。「釈然としないまま簿記に慣れていくうちに、やがて何の違和感も感じなくなる」(128p)ものらしいが、私などはずっとここでつまずいたままだった。この著をヒントに解釈してみた。
すなわち、Aさんにとっての複式簿記が法人化することによって、Aさんが「貸出」したお金は、法人にとってはAさんへの負債(債務)なのである。こう理解することで「なるほど」となったのだがどうだろうか。
さて、「信用創造」のいかがわしさについてである。「近代銀行業の代名詞ともなった信用創造の欺瞞性が、同銀行の設立経過に凝縮されている」(140p)というイングランド銀行の複式簿記で説明される。
○第1段階:銀行の誕生
〈貸方〉(1694.)6.21〜7.2 株式応募:£120万(資本金)
〈借方〉7.27〜11.27 払込:£72万 うち£12万は債務証書(大半は不良債権)
※この段階で銀行が所有する本来のお金(貴金属)は、£60万(未払込£48万)のみ
○第2段階:業務の開始
〈貸方〉8.2〜11.28 約束(捺印)手形発行:£120万
〈借方〉11/28 政府向け貸付:£120万
○第3段階:結果
収益:£7.7万 株式配当:6%
《多額の不良資産を抱えていても、システムさえ回ればちゃっかり収益を稼ぐことができるのだ。・・・ここに近現代の銀行業、そして西洋文明の詐欺的本質が余すところなく凝縮されている。》(143p)
そもそもイングランド銀行設立の目的は戦費の調達であった。それまでは戦費は議会の承認がなければ拠出できなかった。イングランド銀行はその歯止めを取っ払った。さらになしくずしに恒久化したイングランド銀行は国家の金を預かるようになって、国家の出納代行者の座につく。(この経緯については次回後述)
〈貸方〉銀行券:£1,218万 預金:£830万
〈借方〉現金(貴金属)保有高:£655万
※兌換可能金額:655÷(1218+830)=0.32(32%)
《信用創造を支える銀行券や預金が幻想であっても実体として認識され続けることができるのは、現実的にはそんなこと(一斉兌換)は起こり得ないという考えが前提となっているからである。》(162p)
しかし、1797年、ナポレオン戦争の影響により、イングランド銀行の現金(貴金属)保有が£130万を割り込んだ結果兌換停止となる。
《「紙」と「金」の兌換は、あくまで平常時においてのみ成立するルールであり、戦時のような異常時には兌換を法律で禁止することを白日の下に曝した。》(164p)
by タロウ