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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

文学ギルド

何かの賞を作ってその選考委員を自分たちのグループで独占して、そのジャンル全体を支配する権威となる、というのは西洋のお家芸である。いわば文学的ギルドだ。商人のギルドの応用だろう。


ノーベル文学賞スキャンダル “最高実力者”が女性18人に性的暴行疑惑

 ノーベル文学賞を選ぶスウェーデン・アカデミー(定員18人)が存亡の危機に立たされている。

 発端は昨年11月、アカデミー会員の女流詩人の夫、ジャン・クロード・アルノー氏(71)の性的スキャンダルを地元紙がスクープしたことによる。同氏はアカデミーなどの資金で運営する自らの文学サロンで講演会や演奏会を仕切る文化界の最高実力者だ。

 そのアルノー氏は過去20年にわたり会員や会員の妻や娘ら計18人に性的暴行を加えていたことを被害女性に告発された。暴行はノーベル賞晩餐会の夜にも行われ、性行為を拒否した女性を「干してやる」と脅していたともいう。

 さらに同氏はアカデミーから管理を委託されたパリの高級住宅を私物化。ボブ・ディラン氏ら7人のノーベル文学賞受賞者名を発表前に漏らしていた疑惑まで浮上した。

 このため、アルノー氏の妻をアカデミーから追放しようとする“改革派”と“守旧派”が対立していたが、4月12日、“改革派”の旗手、サラ・ダニウス事務局長が辞任に追い込まれてしまった。

女性初の事務局長だったダニウス氏 ©共同通信社 © 文春オンライン 女性初の事務局長だったダニウス氏 ©共同通信社

 ダニウス氏は「私としては続けたかったが、そうはならないのが人生だ」と語ったが、ネット上にはアカデミーの決定に抗議してダニウス氏が辞任時にしていた「プッシーボウ(リボン結び)」をする女性や同性愛者の自撮り写真が次々と投稿されている。

 ノーベル文学賞の選考過程は外部からの影響を排除するため50年間、門外不出という秘密主義の厚いベールに覆われている。秘密主義と終身制がアカデミー会員を「18神」に祭り上げ、アルノー氏は「19番目の神」として権力を恣(ほしいまま)にしてしまった。

 ダニウス氏が辞任し、アルノー氏の妻の詩人は活動を停止、活動できる会員は意思決定に必要な12人を下回り、アカデミーは事実上、機能停止に陥った。会員は終身制で、死刑判決を受けた会員が除名された例が18世紀に一件あるだけだ。カール16世グスタフ国王は憲章を改正して終身制を解こうとしているが、内部から腐った組織を立て直すのは容易ではない。

 スクープを最初に放った地元紙は、アカデミーは毒杯と毒剣で全員が非業の死を遂げるハムレットの結末を迎えると予告する。




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