「美術」は美しくなくてもいい、という現代の風潮への疑問
たとえば、映画「アンダルシアの犬」での眼球を剃刀で斬る映像や蟻が這うシーンなどは、「当時の映画に無かった映像」であり、観客にショックを与え、残酷美という観念を示すには意義があったと思う。しかし、今のような「お下劣表現が当たり前」の時代には、何の価値もないだろう、と私は思う。今だにそんなのが意義がある、と思うこと自体がまさに大学という世界の古さである。(「未だに」は否定を伴うのが文法としては正しいので、ここでは「今だに」である。「だに」自体が死語に近いのだが、「今でも」だとどうも語感が良くない。「今でさえ」がいいかもしれない。)
ただし、この原告は、年齢からも現在の仕事から言っても、「騒ぎを起こして金儲けにつなげよう」という意図は明らかなように思う。裁判に勝てばカネになるし、負けても売名行為としては成功で、美術モデル商売に有利に働くという計算だろう。顔がそういう顔である。
「会田誠さんらの講義で苦痛受けた」女性受講生が「セクハラ」で京都造形大を提訴
京都造形芸術大の東京キャンパスで公開講座を受けたところ、ゲスト講師から環境型セクハラにあって、精神的苦痛を受けたとして、受講していた女性が、大学を運営する学校法人「瓜生山学園」を相手取り、慰謝料など計約333万円の支払いをもとめる訴訟を東京地裁に起こした。提訴は2月22日付。
原告の大原直美さん(39)と代理人が2月27日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。大原さんは「講義内容が本当にひどいものだった」「セクハラを訴えたあとも、大学側の対応が、教育者としてあるまじき姿だった」「生徒を守ってくれないのは本当に残念だ」と心境を語った。
●会田誠さんの講義でショックを受けた。
代理人などによると、大原さんは2018年4月から6月にかけて、京都造形大・東京藝術学舎で開かれた社会人向け公開講座(全5回)を受講した。ヌードを通して、芸術作品の見方を身につけるという内容だった。大原さんは、第3回(2018年5月12日)のゲスト講師だった芸術家の会田誠さんの講義でショックを受けた。
講義は、涙を流した少女がレイプされた絵や、全裸の女性が排泄している絵、四肢を切断された女性が犬の格好をしている絵などをスクリーンに映し出すという内容で、会田さんはさらに「デッサンに来たモデルをズリネタにした」と笑いをとるなど、下ネタを話しつづけていたという。
大原さんは、会田さんのキャラクターや作風を知らなかったという。すぐに、大学のハラスメント窓口に苦情を申し立てたが、第5回(同年6月12日)のゲスト講師で、写真家の鷹野隆大さんの講義でも、勃起した男性の写真の投影などがあった。「講義を受けに来ただけなのに、どうしてこんな目に合うの?」
大原さんは、動悸や吐き気、不眠の症状がつづき、急性ストレス障害の診断を受けた。
●「作家の作品の是非ではなく、環境を作り出したことが問題だ」
大学側は同年7月、環境型セクハラについて、対策が不十分だったと認める内容の調査報告書をまとめたという。ところが、そのあとの話し合いで、示談にあたって、お互い関わり合いを持つことをやめる、という項目をの要望があり、交渉が決裂。大原さんは同大通信教育部を卒業して、他の大学やカルチャースクールで美術モデルの仕事をしている。
代理人の宮腰直子弁護士は「大学は、セクハラ禁止のガイドラインをもうけており、公開講座を運営するにあたっても、セクハラ対策をすべきだった。作家の作品の是非や、セクハラ言動そのものでなく、そうした環境を作り出したことに問題があった」と述べた。講座の運営方法や告知の仕方、その後の対応について責任を追及していくとしている。
大学側は、弁護士ドットコムニュースに対して「訴状が届いていないので、コメントできない」とした。