「クオーター」制ではなく「クオータ」制
クオータ制
クオータ制(クオータせい、英: quota system)とは、人種や性別、宗教などを基準に、一定の比率で人数を割り当てる制度のこと[1]。
例えば、民主主義の帰結として国民構成を反映した政治が行われるよう、国会・地方議会議員などの政治家や、国・地方自治体の審議会、公的機関の議員・委員の人数を制度として割り当てることである。1つの例としては、社会に残る男女の性差別による弊害や格差を解消していくために、政策決定の場の男女の比率に偏りを減らすようにする仕組みなどである。
なお、クオータ(quota)とは、ラテン語に由来する英語で「割り当て、分担、取り分」などの意味である。また、貿易においては、特定品目の輸入数量を割り当てる制度(輸入割当制)に対しても用いられる[1]。
発祥と普及
[編集]クオータ制の発祥地はノルウェーである。オスロ大学の教授でノルウェー左派社会党の党首を務めたベリット・オースが、新政党設立の際に党首就任を承諾する条件として、かねてより論じていた仕組み(=クオータ制)の採用を提示したのが始まりである。産業革命によって農村地域から都市地域へと人口が大移動した際に、農村地域の代表を確保するために実施されていた「地域」割り当て制を「男女」に適用した。
1978年に制定されたノルウェーの男女平等法には、「公的機関が4名以上の構成員を置く委員会、執行委員会、審議会、評議員会などを任命または選任するときは、それぞれの性が構成員の40%以上選出されなければならない。4人以下の構成員を置く委員会においては、両性が選出されなければならない」(数値は1988年に改正)とある。1986年には、グロ・ハーレム・ブルントラント首相と共に4割以上の閣僚が女性という「女の内閣誕生」として、全世界に報道された。日本でも新聞各社によって写真入りで報道された。
その後デンマークやスウェーデンなどの北欧諸国に浸透していき、そこから平等な民主主義国家を目指す世界各国へと普及していった。
クオータ制を採用している国
[編集]※2024年12月時点
- 議員候補などのクオータ制を政党が綱領にしている国:73か国163政党
- 国会議員のクオータ制を憲法で定めている国:14か国(準備中3か国)
- 国会議員のクオータ制を選挙法で定めている国:38か国(準備中3か国)
- 地方議会議員のクオータ制を憲法・法律で定めている国:30か国
これまでに,法律により取締役会におけるクオータ制を導入した国として,イスラエル,ノルウェー,スペイン,オランダ,アイスランド,フランスがあり、国・地方議会議員へのクオータ制を憲法、選挙法、政党のいずれか、または重複して実施している国は98か国ある。
北欧など民主主義の先進国では、1970年代から各政党が次々と綱領に取り入れて、選挙候補者などで実施している。軍隊を持たない国として有名なコスタリカは、地方議会へのクオータ制を法で定めているだけだが、国会の38.6%が女性議員になっている。48.8%と世界一の女性国会議員割合になったルワンダのように、殺戮の動乱後に国連などの指導で、クオータ制を憲法に組み込む国もある。
欧州諸国の中で女性の政治参画が遅れているフランスでは2000年、パリテ(「完全なる平等」を意味する)法を作り、国・地方議会で女性議員が増加中である。法施行後の2001年の統一地方選挙では、22%だった女性議員割合が47.5%に一挙に増えた。2002年の国政選挙では、地方議会とは選挙制度の仕組みの違いもあり12.2%とあまり増えていない。しかし、2007年の選挙では18.3%と効果が出始めた。また、同年に実施された大統領選挙後の内閣は男女半数で構成されている。
フランスがパリテを作ったのは、ベルリンの壁が崩れ(1989年)、民主主義とは何かを問うところから始まった。直接的な引き金は、国連による政界などへの女性進出調査(GEM指数)の順位がEUの中でギリシャ以下になったことだという。ちなみに1997年のGEMでフランスは41位と日本の34位[2]以下になっていた。