国立がん研究センターは19日、全国のがん専門病院32施設を対象にしたがん患者の10年後、5年後の生存率を公表した。2004~07年に診断された人の10年生存率は前回より1・1ポイント上昇し58・3%。10~12年に診断された人の5年生存率は68・6%で前回より0・2ポイント高かった。
集計を始めた1990年代後半から改善傾向が続いている。がん検診などによる早期発見が要因の一つだが、今年度は新型コロナウイルスの影響で、がん検診や受診を控えたり、一部の自治体が検診の実施を断念したりしている。千葉県がんセンター研究所の三上春夫部長は「感染対策をして受けてほしい」と述べ、コロナ流行下での受診や受診体制の整備を求めている。
10年生存率の公表は今回で6回目。21施設約9万4400人の患者情報から算出した。部位別では、前立腺(98・8%)、乳房(86・8%)が高く、肝臓(16・1%)、膵臓(すいぞう=6・2%)は厳しい傾向が続く。患者数が多い部位では、大腸(68・7%)▽胃(66・8%)▽肺(32・4%)――など。
病期(ステージ1~4)別では、早期の1期では生存率が高い一方、進行した4期では低く、早期発見の重要性が改めて示された。乳房の1期は98・0%だが、4期では19・2%に低下。胃の1期は90%を超えたが、4期は6%を下回った。
治癒の目安とされる5年生存率は、32施設の約14万8200人を対象とした。部位別では前立腺が100・0%で、乳房と甲状腺は9割を超え、胃や大腸などは7割を上回った。胆のう・胆管(28・9%)、膵臓(11・1%)は前回より上昇したが、他の部位に比べて低い傾向が続き、早期診断や治療法の開発が求められている。
詳細はウェブサイト(http://www.zengankyo.ncc.go.jp/etc/)で確認できる。【御園生枝里】
がんの部位別5年、10年生存率
5年 10年
前立腺 100.0 98.8
乳房(女) 93.6 86.8
甲状腺 92.6 85.7
子宮体部 86.3 81.6
喉頭 82.0 63.3
大腸 76.5 68.7
子宮頸(けい)部 75.7 68.7
胃 74.9 66.8
腎臓など 69.9 62.8
ぼうこう 68.5 61.1
卵巣 65.3 48.2
食道 48.9 31.8
肺 46.5 32.4
肝臓 38.1 16.1
胆のう・胆管 28.9 19.1
膵臓(すいぞう) 11.1 6.2
※5年生存率は2010~12年、10年生存率は04~07年に診断された患者。単位はいずれも%。国立がん研究センターの資料に基づき作成