昔の「正常血圧基準」の信頼性
「年齢+90」というのは、統計的にというよりは多くの医者の経験則で合意を得た数字だと思う。つまり、現在の医療業界と製薬業界が商売のために統計数字をでっち上げて作った基準より信頼性はむしろ高いのではないか。
私の現在の血圧はまさにその「年齢+90」近くで安定しており、昔の基準というのが実によくできていると思っている。月に一度、200近くまで上がったり、あるいはそれを超えたりして不安になることもあるが、1日2日でまた「正常値」に戻る。(寝不足の時に起床時血圧が高くなっていることが多い。)もちろん、降圧剤は飲んでいない。年を取ると血圧が上がるのは、体の機能を正常に保つためにむしろ必要なことではないか、と私も考えている。
前に書いたように、高血圧体質は癌を抑制するという仮説を誰か実証してくれないだろうか。
今回新たに出された基準値も、緩和されたとはいえ、まだ厳しいですね」(松本氏)
では、本当の「高血圧のボーダーライン」はどこなのか。彼はこう断言する。
「高血圧の目安は『年齢プラス90』が基本だと考えてください。60歳ならば150、70歳なら160、80歳は170。この数字に10%をそれぞれプラスしても、まだ誤差の範囲といえます。40代から下の人は、血圧を気にする必要はありません。
年齢を重ねると、老化で血管が硬くなるのは仕方がない。その分、血液を体のすみずみまで送るために、自然と血圧は高くなってくるものなんです。それに、血圧はストレスや環境、運動などで簡単に変動します。たとえば70代の方なら、検査のとき一時的に200を超えるのは何の問題もありません。
60歳手前まで高血圧で悩んでいた患者さんが、定年で仕事のストレスがなくなった途端に血圧が下がったということもありました。血圧の変化は、体を守るために必要なものなのです」
コレステロールも上方修正
医師でジャーナリストの富家孝氏も、こうした見解に賛同している。
「少し前までは、年齢に90を足したのが血圧の正常値というのは内科の常識でした。日本高血圧学会などが『正常』とする130は、あまりに厳しい値です」
実は、WHO(世界保健機関)が定める高血圧の国際基準は、'99年以降ずっと140のままだ。しかし、日本の医療関係者はこれを黙殺し、「日本では130以上が高血圧ということになっています」としか言わない。当然、どの文献を読んでも国際基準の扱いはとても小さい。
「上限が10変われば、1000万人単位で患者数が変わる。彼らは高血圧患者を可能な限り量産して、薬漬けにしようと考えているのです。数字を操作することによって高血圧患者が増やされてきたという事実を、日本人はもっと知らなければなりません」(富家氏)
医薬品業界には「ブロックバスター」という言葉がある。たった1種類で数千億円もの売り上げを叩き出すような、メガヒット薬を指すいわば隠語だ。ノバルティスファーマの不正によって知られるようになった降圧剤は、その代表格。降圧剤を売りさばこうという製薬会社の思惑が、高血圧のボーダーラインをどんどん厳しくしてきた。
降圧剤と並び称されるブロックバスターが、コレステロールや中性脂肪を下げる高脂血症治療薬である。実はこれらのボーダーラインについても、今回の新基準値発表を受けて「今までの基準値は不当に厳しかったのではないか」という疑問の声が上がっている。