ゲゼルシャフトとゲマインシャフト
ゲマインシャフト (Gemeinschaft)とは、ドイツの社会学者フェルディナント・テンニース(Tönnies)が提唱した概念で、「共同体」を意味するドイツ語である。この共同体は、地縁、血縁、民族、家族などにより自然発生した社会集団であり、実在的かつ有機的な生命体とみなされる。本質意志(Wesenwille)に基づく有機的結合を特徴とし、人々が自然に結びつき、共通の価値観や目標を持つ社会の形成を指す。テンニースの社会学理論において、共同体はしばしば前近代社会や農村社会に例えられ、個人よりも集団の利益や存続が重視される。また、共同体では信仰、文化、伝統が中心的な役割を果たし、個々の行動や規範が共有され、持続的な秩序が保たれる。対義語は、ゲゼルシャフト。
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
[編集]テンニース(1855年 - 1936年)は、人間社会が近代化すると共に、地縁や血縁、友情で深く結びついた自然発生的なゲマインシャフト(Gemeinschaft、共同体組織[1])とは別に、利益や機能を第一に追求するゲゼルシャフト(Gesellschaft、機能体組織[1]、利益社会)が人為的に形成されていくと考えた。
ドイツ語では、Gemeinschaft(ゲマインシャフト)は概ね「共同体」を意味し、Gesellschaft(ゲゼルシャフト)は概ね「社会」を意味する。テンニースが提唱したこのゲゼルシャフト(機能体組織、利益社会)とゲマインシャフト(共同体組織)とは対概念であり、原始的伝統的共同体社会(共同体組織)を離れて、近代国家・会社・大都市のような利害関係に基づき機能面を重視して人為的に作られた利益社会(機能体組織)を近代社会の特徴であるとする。
ゲマインシャフトでは人間関係が最重要視されるが、ゲゼルシャフトでは利益面や機能面が最重要視される。
日本においては、労働集約型の農業を基礎に「協働型社会」とも呼べるものが形成されていたと言われる。これは産業革命、工業化のプロセスに従って企業共同体へと変貌したと言われる(日本型社会主義)。しかし、バブル崩壊、経済のグローバル化、終身雇用制の崩壊、派遣労働者の採用の増加等に伴い、かつて企業そのものが家族共同体のようであると評された日本の企業風土も1990年代以降大きく変貌したと言える。