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独楽帳

青天を行く白雲のごとき浮遊思考の落書き帳

夫婦の貞操義務の法的根拠

性的倫理に関係する思考素として「不貞」の法的問題について引用しておく。

(以下引用)



夫婦の貞操義務違反って何?法律で定められているの?

[投稿日] 2017年05月19日 [最終更新日] 2018年01月19日
夫婦の貞操義務違反って何?法律で定められているの?

夫婦の貞操義務違反は、法律上“不貞行為”と“不貞行為以外の行為”とに分けられます。

“不貞行為”とは、「自由な意思に基づいて、配偶者(内縁関係も含む)以外の異性と性交渉を行うこと」をいいます。
あくまで「異性と」「性交渉を行う」ことであるため、次の行為は不貞行為に該当しません。
・同性との性交渉
・性交渉に至らない性的関係

これに対し、“不貞行為以外の行為”とは、次のことを指します。
・配偶者以外の同性との性交渉
・配偶者以外の同性との性交渉に至らない性的関係
・配偶者以外の異性との性交渉に至らない性的関係

夫婦の貞操義務については、法律上の具体的な明文があるわけではありません。しかし日本が一夫一婦制を採用していることから、婚姻した夫婦(内縁関係も含む)において法律上当然に認められる義務とされています。

貞操義務違反は法的にはどんなペナルティがある?

上記のとおり夫婦の貞操義務については法律上明文化されていません。しかし、貞操義務に違反した場合、2つの法的なペナルティがあります。
(1)離婚原因になる
(2)慰謝料請求を受ける

どういうことか、詳しく見ていきましょう。

離婚原因になる

婚姻は両性の合意のみに基づくことから、離婚もまた両性の合意に基づいてなされるのが原則です。
ただし、婚姻関係が回復困難な程度にまで完全に壊れてしまった場合(これを「婚姻関係の破綻(はたん)」と呼びます)にまで婚姻関係を維持しても無意味です。そのため民法770条1項は、婚姻関係が破綻したといえる場合を5つ定め、夫婦の一方が離婚に反対したとしても、これらに該当する場合には裁判所の命令で離婚することができるものとしました。

“不貞行為”は民法770条1項1号で離婚原因とされています。
“不貞行為以外の行為”は民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たります。しかしとても広くて曖昧な表現を用いているので、どの程度の性的関係があれば離婚原因になるのかについては、個々の裁判所が判決で決めることになります。

慰謝料請求を受ける

夫婦の貞操義務違反は、配偶者の一方と第三者とが共同して行うのが通常です。(※例外として、夫が無関係の女性を強姦した場合など、配偶者の一方が単独で行う貞操義務違反の行為も存在します。)

浮気された側は、貞操義務違反を理由として、浮気をした側に対し、慰謝料の支払いを求めることができます。
また、浮気された側は、第三者つまり浮気相手に対しても、「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為」(最高裁判所平成8年3月26日判決)をしたことを理由として、慰謝料の支払いを求めることができます。

ただし、欧米諸国の多くの裁判所は、浮気相手に対する慰謝料請求は認めていません。性に関する問題をおおやけの法廷で争うことはふさわしくないと考えられているからです。
日本でも、上記の最高裁判所平成8年3月26日判決は、婚姻関係が破綻した後に開始された不貞行為を理由として第三者に対してなされた慰謝料請求を認めませんでした。これもまた、第三者に対する慰謝料請求を認めないという世界の趨勢に配慮したものといえるでしょう。

セックスレスのせいで浮気をした場合

では、夫婦がセックスレスであった場合はどうなるでしょうか?
妻とセックスレスであったことから、夫が第三者の女性と浮気をしたケースを例に考えてみましょう。

上記の最高裁判所平成8年3月26日判決により、婚姻関係が破綻した後に不貞行為をしても不法行為とは評価されません。そのため、浮気を開始する前に婚姻関係が既に破綻していたかどうかが争点となります。

セックスレスが性交不能(性交をしたくてもできない)を原因とするときは、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして離婚を認めるのが裁判所の立場です(最高裁判所昭和37年2月6日判決)。

これに対し、性交不能ではなく、性交拒否(性交をしようと思えばできるのに応じない)によるセックスレスのときは、最高裁判所の判決は見当たりませんでしたが、多くの裁判所では離婚原因にあたるとしています。
妻が正当な理由がないのに一方的に性交を拒否し、婚姻関係が破綻したと評価できる期間まで継続した場合には、浮気は不法行為ではないといえるでしょう。

なお、セックスレスの期間がどの程度に達すれば婚姻関係が破綻したといえるかについては、まさにケースバイケースです。個々の裁判所が、当該事案の事情に基づいて、最終的には判決で決めるべき事項となります。

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