脳梗塞は脳卒中の1つで、頭の中の血管が何らかの理由で詰まったり、血の巡りが悪くなって栄養や酸素が届かなくなった部分が壊死してしまう病気です。厚労省の2014年の統計によると、年間11.4万人もの方が、日本人死亡原因の第4位の脳卒中で亡くなられ、その約60%が脳梗塞による死亡と報告されています。また、脳梗塞は罹患すると要介護状態になる可能性が高いのも事実です。そんな脳梗塞の前もって現れる前兆を知っておれば、対処の仕方もあるというものです。ここでは、そんな脳梗塞の前兆について、お話ししましょう。

脳梗塞には前兆がある

脳梗塞の小さな前兆でも見逃さないことが病気の予防につながります。脳梗塞には代表的な前兆があって、その症状に早く気付くことが重要なのです。と云うのは、脳梗塞は発症すると約14%の人が命を落とす、とても危険な病気だからです。前兆が見られたのにその時に対処が遅れると、一命を取り留めても後遺症が残ってしまうことが多いのです。そんな最悪の状態を招かないように、脳梗塞の症状と前兆を知っておくことが、とても重要になって来るのです。

どんな前兆があるの?

脳梗塞には、実感した、経験したと答えられる患者さんが4分の1程度いる「一過性脳虚血発作」と呼ばれる前兆があります。実際には、前兆のない場合もありますが、多くの場合、15~30分、長くても24時間で消えてしまうので、気が付かなかった方もいるのです。一過性の症状なので、それほど問題はないだろうと一度は放っておいても、また発作が起こると脳梗塞の可能性が高まります。前兆の発作があった方の約20%は3ヶ月以内に脳梗塞を発症するとされています。中には、1週間以内に発症するケースも見られます。前兆は脳梗塞予防の最後のタイミングですから、見逃さないことが一番のポイントになります。では、その脳梗塞前兆のいろんなパターンを見てみましょう。

【一過性脳虚血発作の(一時的な)前兆】

① 体調の変化、手足、運動機能の異変がある

自覚症状として感じやすいのは、めまいや頭痛、手足の違和感ですね。
・片方の手足がしびれて、力が入らない。
・頭痛やめまいがする。
・急に力が抜けて、持っていたものを落としてしまう。
・口が上手く閉じられない。
・力はあるはずなのに、歩いたり立ったりしていられない。
・思うように字が書けない。
・ふらついて、真っ直ぐ歩けない。
・顔の片側がしびれて、ゆがむ。

② 目、視覚に違和感がある。
目の疲れと勘違いしがちですが、脳梗塞の前兆として目に現れます。
・片側の物に気が付かず、ぶつかってしまう。
・物が二重、三重に見える。
・焦点が合わなくなる。
・視野が一部分欠けたり、狭くなったりする。
・片側の目だけが、カーテンがかかったように、一時的に見えなくなる。これは、「一過性黒内障」と云って、特に注意が必要です。強い動脈硬化のせいで、剥がれた血栓が目の動脈に流れ込んで起こります。10分以内で症状が回復するので、病院に着くころには症状が無くなっているのがほとんどですが、脳梗塞の典型的症状になるので、一度病院を受診して、医師の診断を受けることが大切です。

③ 言語障害の症状が出ます。
・ろれつが回らなくなる。
・物忘れに似た症状で、言いたいのに言葉が出ないことが増えます。
・言い間違えや、意味の分からない言葉が出るようなる。
・口の動きが滑らかでなくなる。

④ 理解力が落ちる。
・文章を読んでも、理解出来ない。
・人の言ってることの、意味が分からなくなったり、理解出来なくなる。

前兆が起こっても、全ての方が脳梗塞になるわけではありませんが、脳梗塞が起こると。脳細胞が壊死を始めて、ダメージが大きくなって、後遺症も残り易くなります。ですから、その前兆にいち早く気付くことが重要なのです。本人のみならず、周りの方も異変に気が付いたら早めに教えてあげれば、脳梗塞予防に役立ちます。

【一過性脳虚血発作(一時的)でない前兆】

① 体調の変化、手足の異変、不自由な症状
・一日中、めまいや耳鳴りがする。
・突然原因不明の頭痛や肩こりが起こる。
・急な動悸、息切れが増えた。
・痰が絡みやすくなったり、むせることが多くなった。
・指先が上手く動かなくなった。
・段差がなくても、こけたり、つまずいたり、足が引っかかる。
・手足のしびれがよく起こる。
・以前と比べて、字が下手になったように思う。
・まれに、口や顔がしびれる。

② 目の異変
・物が二重に見えることがある。
・まれに、視野が急に狭まったり、欠けたりする。

③ 記憶力、理解力の低下。
・早口でしゃべられると、理解できない。
・記憶が飛ぶことがある。
・一瞬、意識を失うことがある。
・簡単な計算がとっさに出来ない。
・物忘れが増えた。

④ 言語障害の症状。
・ろれつが回らない。
・大きな声を出すと、息切れする。
・声が上手く出ずに、かすれる。

⑤ 食事の時の異変。
・食べ物や飲み物を飲み込みにくい。
・食べよう、飲もうとするとむせたり、咳き込んだりする。

⑥ 精神的に不安定。
・急にふさぎ込んだりして、うつ状態になる。
・小さなことで泣き出してしまう。
・反対に急に大声で笑いだしたりする。

隠れ脳梗塞のチェックテスト

病院で検査をしなくても、隠れ脳梗塞の可能性があるかどうかを自宅で簡単にテストが出来ますので、ぜひ試してみましょう。

両手突き出しテスト

① 背筋を伸ばして真っ直ぐに立ち、目を閉じましょう。
② 両腕を肩の高さまで持ち上げて、左右平行に真っ直ぐ前に突き出しましょう。この時、手のひらは上に向け、親指が外側、小指が内側になるようにして、指は出来るだけ真っ直ぐに伸ばしてください。
③ そのままの状態で、10秒間静止しましょう。
結果判定:
1-片方の腕が無意識に内側に傾くように下がってくる。
2-肘がだんだん曲がってきたり、手の指が少し開き気味になる。
3-手が内側にねじれず、そのまま腕が下がってくる。
1-3の場合は、今後大きな脳梗塞を引き起こす前兆「隠れ脳梗塞」が疑われます。

目隠し足踏みテスト

1-あとで立っていた位置と向きが分かるように目印をつけておき、真っ直ぐに立ちます。
2-目をつぶって、太ももをあげ、腕をしっかり振って、その場で足踏みを50回します。
3-50回の足踏みが終わったら、目を開いて、スタート時点の立ち位置・向きからどのくらい離れているかを確認してください。 結果判定:
スタートした位置から、向きが45度以上、距離で75㎝以上離れていと、小脳と頸髄に隠れ脳梗塞の可能性が考えられます。

【動脈硬化が原因の病気とその自覚症状】

血管の部位

病名

自覚症状

脳梗塞、脳出血

手足のしびれや麻痺、めまい、ろれつがまわらなくなる

心臓

狭心症、心筋梗塞

運動したときの胸の圧迫感、痛み

腎臓

腎硬化症

血圧上昇

大動脈

大動脈瘤、大動脈解離

胸や腹部の痛み

下肢

閉塞性動脈硬化症

歩行時の下肢の痛み、冷たさ

脳梗塞の前兆かなと思ったら、先ず生活習慣を改めよう!

血流・血管は生活習慣の影響を受けやすい

血液はいつも全身の細胞を巡って酸素や栄養を供給し、細胞からの老廃物を排出器官に運搬する役割を担っています。ですから、体の内外のどこかが不調なら、血液にその影響が表れます。
・ドロドロ血-食事内容や生活習慣の乱れは、血液の粘度を増します。
・ザラザラ血-脂肪分の多い食事やアルコールの過剰摂取は、血小板の凝固性が高まって、粒上の物が流れる血液になります。
・ベタベタ血-ストレスや寝不足などで身体が弱っていると、白血球が増えて粘着性が増し、複数の白血球が固まって内壁にくっつくようになります。

血管を傷つける悪い生活習慣チェック

以下の項目に心当たりのある方は、ドロドロ血になり易いので、以下の生活習慣を改める必要があるでしょう。

  • 煙草を吸う
  • お酒を毎日日本酒2合又は、ビール大瓶2本以上飲む
  • ストレスをよく感じる
  • 毎日0時以降に寝る
  • 朝の目覚めが悪い
  • 朝食は食べない
  • 麺類やどんぶりが好き
  • 外食を週5回以上する
  • 食べるのが速い
  • 休日はゴロゴロして過ごすことが多い
  • 甘いお菓子が好物
  • ジュースや缶コーヒーが好き
  • エスカレーターやエレベーターをよく使う
  • 暑い日でも手足が冷たい
  • 紫外線をよく浴びる

いかがでしたか、少しでも脳梗塞の前兆と疑ったら、先ず専門医を受診し、治療と共に生活習慣の改善に努めることが大事ですね。
是非、参考にしてみてください。