「必須ミネラル」の罠
今使用中のサプリメントの中のクロムやセレンは微量だが、果たして体内蓄積は無いのかどうか、少し心配である。
セレンやクロムを含むサプリメントの過剰摂取にご注意
平成22年6月
福祉保健局
アメリカにおいてセレンやクロムを含むサプリメントで健康被害
アメリカでは、2008年に政府機関が、ある特定のダイエタリーサプリメントにセレンやクロムが高濃度に含まれていて、健康被害が報告されていると注意喚起しました。この製品の利用者に、脱毛、筋肉のけいれん、下痢、関節痛などの症状が出ましたが、検査の結果、最も多いもので1回摂取量中に40,800マイクログラムのセレンが検出され、クロムは3,426マイクログラムが検出されました。
東京都の調査結果(ミネラル補給用サプリメントのミネラル含有量調査)
日本では、アメリカのような事例は報告されていません。しかし、これらのミネラルを含有するサプリメントは市場に流通しており、必要以上のミネラルを摂取する可能性があることから、東京都では市販のサプリメント中のセレンとクロムの含有量を調査しました。
セレン
セレンは、厚生労働省が作成した「日本人の食事摂取基準(2010年版)」で推奨量(必要量を満たすと推定される1日あたりの摂取量)及び耐容上限量(過剰摂取による健康被害を起こすことのない最大の量)が設定されています。
調査結果について、成人男性に比べて推奨量が低く設定されている成人女性を例にとって考えると、28製品のうち22製品で、表示された摂取目安量が推奨量である1日当たり25マイクログラムを超えていました(図1)。日本人は通常の食事からセレンを十分に摂取しており、その平均摂取量は約1日当たり100マイクログラムといわれています。この平均摂取量を調査結果に加算すると、耐容上限量を超えてしまう製品がありました。
クロム
クロムについては、クロムをどれだけ摂取すると健康障害が出るかについての研究が不十分であるため、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」でも耐容上限量は設定されておらず、推奨量のみ設定されています。
セレンと同様に、成人女性を例にとって考えると、71製品のうち24製品で、表示された摂取目安量は、クロムの推奨量1日当たり30マイクログラムを超えていました(図2)。
調査結果
健康安全研究センターホームページ- 「ミネラル補給用サプリメントのミネラル含有量調査」(PDF)
(東京都健康安全研究センター年報 第57号 2006) - 「ミネラル補給用サプリメントの含有量調査 セレンの分析」(PDF)
(東京都健康安全研究センター年報 第58号 2007)
セレンもクロムも通常の食事で不足することはありません
セレンは、酵素やタンパク質の一部を構成し、抗酸化反応(酸化物質により細胞が障害を受けるのを防ぐ反応)において重要な役割を担うミネラルです。セレンは、藻類、魚介類、肉類、卵黄に豊富に含まれており、日本人の通常の食事で不足することはありません。
クロムは、糖質やコレステロールの代謝、たんぱく質代謝の維持などに関係しており、海藻、そば、魚介類、肉類などに含まれています。クロムについても、セレンと同様に日本人の通常の食事では不足が問題になることはありません。なお、クロムは通常3価クロム、6価クロムの状態で存在します。6価クロムは毒性が強いことで知られていますが、食品中に存在するクロムのほとんどは3価クロムです。
主な食品のセレンとクロムの含有量については、独立行政法人国立栄養・健康研究所ホームページをご覧ください。
事業者の方へ
セレンやクロムを含むサプリメントを取り扱う場合は、摂取目安量が「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を超えることのないように設定するとともに、過剰に摂取しないよう消費者の方への情報提供に努めてください。
参考資料
- 食品安全委員会ホームページ
- 「ファクトシート:クロム」(PDF)
- 東京都健康安全研究センターホームページ
- 「ミネラル補給用サプリメントのミネラル含有量調査」(PDF)
(東京都健康安全研究センター年報 第57号 2006) - 「ミネラル補給用サプリメントの含有量調査 セレンの分析」(PDF)
(東京都健康安全研究センター年報 第58号 2007)
- 「ミネラル補給用サプリメントのミネラル含有量調査」(PDF)
- 独立行政法人国立栄養・健康研究所ホームページ
- 厚生労働省ホームページ
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